三月四日(水)己卯(舊正月十四日 晴、日中は暖かい

今日の讀書・・昨夜、丸谷才一著『輝く日の宮』(講談社文庫)を讀み終へました。ネットで一五〇圓で入手した文庫本でした。まあそれに送料が値段以上にかかつてしまふのですが、手軽に入手できるので、仕方ないことなんでせう。本自體が一圓なのに、送料が二五七圓もかかるといふ例もありますから、今さらこのシステムをどうのかうの言つても仕方ないと思ふこの頃であります。

さて、内容は、一五〇圓では量りきれない重量級でした。なんと言つても、『源氏物語』の成立の秘密をめぐる話が興味深かつたです。紫式部と藤原道長との合作といつてもよいのだと思はせられましたし、題材や原稿用紙の提供者であつたといふことだけでも、その關係の深さがわかりますものね。

それで、ぼくも、積んでおいた王朝關係の本の中から出してきました。まづ、今泉忠義他編『源氏物語 全』(桜風社)です。これは原典だけで、註解のない無垢の一册本です。厚さは約五センチありますが、どこを見るにも便利です。それと、與謝野晶子譯『全譯 源氏物語』(三笠文庫・全七冊)です。これは三年前に早稲田通りの古本屋でまとめて求めたもので、正字・正假名遣ひ本です。一應、譯本もないと、意味がとれないし、かといつて、單語の意味を引き引き讀む餘裕もありませんので、これで萬全とさせていただきます。

それで、實際に讀むのは、一昨日紹介した、影印本の、野々口立圃(りゆうほ)自筆版下本複製『十帖源氏』(古典文庫・一六五四年頃)です。しかも、昨夜から少し試みたんですけれど、この『十帖源氏』を讀みながら、もちろん影印本ですから、一字一字たどるやうにしてしか讀めませんけれど、その文を讀みながら、『全譯 源氏物語』の同じ文の横に線を引いていくんです。すると、『十帖源氏』はダイジェスト本ですから、飛び飛びに引かれるんですね。

おもしろいのは、それでも充分意味が通じますし、よりわかりやすいことです。なにしろ、原文は、回りくどいといふか、同じことをくりかへしたりで、なかなか話が進まないのです。要するに、あまりも帝が桐壺の更衣を贔屓にするもんだから、他の女官が嫉妬して、意地惡をしたので、それでも主人公の「きよらなる玉のをのこみこ」(のちの光源氏)を産んでからですが、たうとう衰弱して死んぢやつた、といふだけのことなんです。その點、ダイジェスト本は親切です?

まあ、文學であるといふことは、微に入り細にわたるその成り行きを樂しむわけですけれど、ぼくなんかは、今のところ、細部を詮索するよりも、物語としての筋をたどりたいと思つてゐるので、ダイジェスト本の『十帖源氏』は最適です。しかも、くづし字のお勉強にもなります。

 

そんなことで、書庫を調べたときに、またまた面白い本を見つけてしまひました。森谷明子著『千年の黙(しじま) 異本源氏物語』(創元推理文庫)です。さらに、目次を見てびつくりです。〈第一部 上にさぶらふ御猫〉、〈第二部 かかやく日の宮〉、「第三部 雲隠」とあつたんです。〈かかやく日の宮〉ですよ! 丸谷才一さんの二番煎じでせうか、と疑ひながら奥付を開くと、二〇〇三年刊行とありまして、丸谷さんのはと改めて見ると、同じく二〇〇三年ではありませんか。同じ時期に同じやうな源氏本が出てゐたんですね。

これも讀まざあ、ですね。ミステリー調なんでせうか? もちろん古本で見つけたものです。ついでですから、讀んでみたいと思ひます。

 

今日の寫眞・・今泉忠義他編『源氏物語 全』(桜風社)と與謝野晶子譯『全譯 源氏物語』(三笠文庫)。丸谷才一著『輝く日の宮』(講談社文庫)と森谷明子著『千年の黙(しじま) 異本源氏物語』(創元推理文庫)。

それと、今日の野良猫ども。かはいいモモのベランダデビューと寅の晝寢。




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