正月十日(火)丁酉(舊十二月十三日 晴

 

今日の讀書・・『伊勢物語』、昨夜は横になつたとたんに寢てしまつたので、たうとう讀み終へることができませんでした。それで、本日讀み終へての感想ですが、いやまあ、男と女の仲の複雑さ、といふか豊かさとその人生における比重をかんがへると、今日の男女關係はまるでかす(滓)のやうなものではないかと思ひました。いや、精神的にですよ。心のかけ方としてね。今から一一〇〇年以上も前のことです。 

もちろん、當時の力も金も閑もある貴族たちのことですから、庶民はどうだつたのかは、また別かもしれませんが、それにしても平和な時代であればこそ男も女も幸せに、そして戀に生きることができたのだらうなと思ひました。

 

和歌だつて、『古今和歌集』 のやうに、歌だけとりだされると味はふのに時間がかかりますが、物語られたはなしのなかで詠はれてゐるので、その意味のみならず、語られるはなしそのものを豊かに説明してゐるといつたらいいでせうか。 

人生の機微についてもふれた歌、またその情景が髣髴とされるいい歌が多いのにも感心しました。

 

〈ゆく水とすくるよはいとちる花と いつれまててふことをきくらむ〉 

〈世中にたえてさくらのなかりせは 春のこころはのとけからまし〉 

〈はるるよのほしか川邊のほたるかも 我すむかたのあまのたく火か〉 

〈そむくとて雲にはのらぬものなれは 世のうきことそよそになるてふ〉 

〈かたみこそいまはあたなれこれなくは わするるときもあらましものを〉 

〈つゐにゆくみちとはかねてききしかと きのふけふとはおもはさりしを〉 

 

ところで、夕方妻と散歩し、そのついでに、書道教室を開いてゐる會場を見てきました。ひとつは中之郷信用組合、それと、南綾瀬地區センターです。両者とも、「毛筆・細字・かな」を教へてくれさうなのでいいなと思つたのですが、どちらも、『白玄誌』といふ書道誌に添つてといふのが氣になりました。初心者歡迎となつてゐるので、そそられましたが、もう少し時間をかけてさがしてみることにしました。 

ついでに赤札堂に立ち寄つたので、妻にお願ひして、マコロンとかりんとうとわれせんを買つてもらひました。 

 

今日の寫眞・・妻が活動してゐる、「かつねこ」の案内ポスター。書道教室案内。それと、北京さん前を通りかかつたら、十二月卅日をもつて閉店したとの掲示を見て驚きました。ちやうどおばさんと顔があつたのでお話を聞くことができました。それにしても残念です! 

 

*正月一日~十日までの讀書記録 

正月三日 長尾誠夫著 『源氏物語人殺し絵巻』 (文春文庫) 

正月八日 中野三敏著 『本道樂』 (講談社) 

正月十日 『伊勢物語』(日本古典全集)