正月十三日(金)庚子(舊十二月十六日 晴

 

今日の讀書・・昨夜、衝動的に讀みはじめた、佐々木譲著 『廃墟に乞う』 を手に、古本散歩に出かけてきました。夜更ししたので、ほんとは眠くて、家で讀んでゐてもよかつたのですが、金曜日は神田の東京古書會館の即賣會です。従姉の郁子さんからいただいた派手なジャケットを着て歩き回つて來ました。 

古書會館には晝どきについたので、さう混んではゐませんでした。珍しいものとしては、古典文庫の 「室町時代物語」 全七册(一九五四年~一九六六年刊)のうちの四、五、六、七があつたので求めました。だいぶ古びてゐましたがそれだけにただみたいな値段でした。 

これは、先日購入した、『書物捜索』 の著者、横山重さんが精魂込めて「捜索」した文獻に基づいて編纂・校訂された本なんです。その經緯が 『書物捜索』 に詳しいやうですから、これまた樂しみがふえたといつていいでせう。 

もちろん、「室町時代物語」 については、角川書店から出た、『室町時代物語大成』 (一九八三年~一九八八年刊行。横山重・松本隆信共編。全十五卷)といふ決定版とも言へる全集がありますが、それはあまりにも高價であるし、當面必要ではありません。が、敬意を表したいと思ひます。

 

つづいて、中央線立川驛北口を出たところにあるデパートで開催中の、「立川フロム古書市」まで足を延しました。といつても、お茶の水驛から快速特急で數驛の近さ、三〇分ほどでした。 

まあ、先日の松戸の古書市と似たやうなもので、たいしたことはなかつたのですが、ただ一册、小門勝二著 『荷風散人傳 こうの命』 が目にとまり、サイン入りでなくてもいいのにと思ひつつ、興味にひかれて買つてしまひました。例の、荷風の刺靑の件ですからね! 

歸りは、淺草橋驛で乘り換へ、押上驛のスカイツリービルで、天龍の餃子をいただきました。宇都宮ががつかりだつたので、口直しでした。 

 

歸宅後、佐々木譲著 『廃墟に乞う』 を一氣に讀みました。直木賞受賞作だけあつて面白かつたです。 

 

*補注・・「室町時代物語」 広義には、室町時代に製作・書写された物語、草子の汎称で、文学史では室町から江戸期にかけて、御伽草子、仮名草子、浮世草子と連ねて用いており、その製作・享受の時期は近世にまで及ぶ。 

文正草子、鉢かづき、小町草子、御曹司島わたり、唐糸草子、木幡(こはた)狐、七草草子、猿源氏草子、物ぐさ太郎、さざれ石、蛤の草子、小敦盛、二十四孝、梵天国(ぼんてんこく)、のせ猿草子、猫の草子、浜出(はまいで)草子、和泉式部、一寸法師、さいき、浦島太郎、酒顛童子、横笛草子等がある。 

 

今日の寫眞・・「立川フロム古書市」。小門勝二著『荷風散人傳 こうの命』と佐々木譲著『廃墟に乞う』(文春文庫)。