正月卅一日(火)戊午(舊正月月四日 晴

 

今日は修善寺にやつてきました。先日電話で連絡があり、突然の仕事が舞ひ込んできたからでした。 

一應辞めたことになつてゐたのですが、後任者の都合がつかなくてお呼びがかかつたのでした。まあ、そろそろ温泉に入りたいと思つてゐましたし、それに長年お世話になつたホテル棟とそのレストランが今日を限りにクローズするといふので、ご馳走にも期待がもてたからでした!

 

それで、出かけることになつたので、妻が薦めるままに、出がけに床屋に行きました。生前父が通つてゐた床屋さんで、なんと從兄弟の正夫さんもご贔屓のお店でありました。 

なあに、髪の毛はそのままに、顔をあたつてもらふだけでしたが、何年ぶりだつたでせうか。伊豆に住みはじめた頃に訪れて以來ですから、かれこれ二十年ぶりでせう。それで忘れかけてゐた雰圍氣に浸りつつ、氣持ちよくひげをととのへ、顔を剃つていただきました。 

歸宅したら、妻と母が一緒になつてのぞきこみ、いいいいと言ふのでご機嫌になり、また耳の毛がのびたころに行こうかなと思ひました。まあ、二千圓切りですから、いいかなと思ひました。

 

そんなぼ~つとした氣分のまま家を出て、東京驛一二時發のがらがらの踊り子號に乘り、柿の葉壽司をお晝に、久しぶりの旅行氣分でした。 

で、直接修善寺驛にやつてまゐりました。驛舎が完成して驛前もきれいになりましたしね。ただ、シャトルバスを一時間待たなければならず、驛前の唯一の喫茶店に入つて、飯嶋和一さんの 『神無き月十番目の夜』 を讀みつづけました。ほんとは、仕事の前に深刻な物語を讀むのは、氣分的にうまくないのですが、やめられませんでした。

 

宿泊は、快適なゲストハウス。夕食は、ホテル棟のレストランに行つていただきました。いつものやうに會席料理でしたが、今日は特別な日なので、ぼくは生ビールを飲みながら、出された順番に食べていきました。いつもなら、すぐにご飯とみそ汁をだしてくれるようにお願ひし、それで、次々に出てくるお料理を殘してしまふこともあるのです。が、今晩はすべて食べつくしました。 

そのすべてを寫眞に撮つたので、あとで、ドイツの愛ちやんにはメールに添付してあげようと思ふのですが、いやがるでせうか? 

もちろん温泉にも入りまして、それから横になつたはいいのですが、『神無き月十番目の夜』 に興奮させられてしまひ、なかなか寢付けなくて困りました。 

 

今日の寫眞・・踊り子號内外。會席料理の樣子。あまり色彩がよくなくて殘念ですが。

 

 

*正月一日~卅一日までの讀書記録

 

正月三日 長尾誠夫著 『源氏物語人殺し絵巻』 (文春文庫)

 

正月八日 中野三敏著 『本道樂』 (講談社)

 

正月十日 『伊勢物語』 (日本古典全集・影印本)

 

正月十一日 松本健一著 『真贋 中居屋重兵衛のまぼろし』 (幻冬舎アウトロー文庫)

 

正月十二日 佐々木譲著 『廃墟に乞う』 (文春文庫)

 

正月十八日 飯嶋和一著 『雷電本紀』 (小学館文庫)

 

正月廿三日 『一條攝政御集』 (一樂古筆叢書)