十月廿二日(土)丁丑(舊九月廿二日 曇天

 

〈尾瀨トンデモ紀行(三)〉 一ノ瀨から三平峠を經て尾瀨沼まで

 

尾瀨のシーズンは六月から十月までとうかがひました。それなのに、一ノ瀨休憩所はすでに厚い板で蔽はれて、閉鎖されてゐました。すでに先日の日曜日あたりで今期の營業といふか仕事を終へてしまつたやうです。ですから、トイレを借りただけで、歩きすぎるしかありませんでした。 

一ノ瀨休憩所に着いたのは一一時五五分でした。約三・五キロ離れた大淸水から一時間三〇分かかつたことになります。

 

山道はたしかに美しかつたです。谷川もきれいでした。はじめのうちは、ところどころでステレオ立體寫眞を撮る餘裕もあつたのです。それなのにこの苦しさはなんだつたのでせう。それほどの高山といふわけでもないでせうし、體力が衰へてゐたことは否めませんが、心臟がやはり耐えきれなかつたからなのでせうか。道といつても木道であり、まあ階段と同じですが、歩幅が一歩ごとに異なるので足運びがままなりません。これがけつこうこたへたと思ひます。いや、肩の荷もきつかつたかも知れません。 

それで、ぼくたちを追ひ越して行く方はゐても、ぼくたちが追ひついた方はだれひとりをりませんでした。悔しかつたですけれども、前方にはどこまでも木の階段のみが待ち受けてをりました。 

針葉樹林帶に入り、木道もなだらかになりましたが、尾根にも上がつてきたのに、まだ登り道です。いいかげんにしてくれと叫びたかつたです。

 

午後一時を回りましたが、お晝は、出來れば尾瀨沼の見えるところで食べようと思つてがんばりました。やつと三平峠(尾瀨峠)に着いたのが一時四五分。大淸水からですと、三時間二〇分かかつたわけです。記念寫眞はどうにか撮りましたけれど、顔が引きつつたままほころびません。がまんして、下り坂となつた木道を急ぎました。氣分はぐつとよくなりました。 

でも、紅葉はどこにいつてしまつたのでせう。峠を越えて、沼側に下りてきたとたんに薄暗い道に變はりました。植生がまつたく變はつたのでした。が、その針葉樹のすき間から、沼が見えた時は感動でしたね。いつとき疲れも吹き飛びました。 

 

今日の讀書・・今日は悲しい出來事があり、妻と出かけてきました。人のいのちのはかなさを思はせられた一日でした。 

ほんとうは、古本市があちこちで開かれてゐたのですが、妻につき合ひました。で、讀む本といつても、輕いものしか讀めませんでした。 

 

今日の寫眞・・〈尾瀨トンデモ紀行(三)〉 一枚目は、登りつめた尾根から、歩いてきた谷を振り返つた景色。つづいて、三平峠にて記念撮影。そして、はじめて目に入つてきた尾瀨沼。