十月廿五日(火)庚辰(舊九月廿五日 晴のち曇天のち雨

 

〈尾瀨トンデモ紀行(六)〉 沼山峠休憩所からブナ平を經て、會津高原尾瀨口驛まで

 

バスは、午後四時二〇分發。乘客はと見回しますと、ぼくたちだけのやうです。で、まるで貸し切りバスでしたが、はたして、まことにここからが見どころ満載の旅でありました。 

バスに乘り込んでほつとする暇もなく、運轉手のおぢさんがバスをとめて「案内」してくれたのは、ブナ平といふところでした。それをどのやうに表現したらいいでせうか。絶景かなとも違ふし、たんに美しいでは十分ではないし、まあ、幻想的な美しさとしか言へないやうな光景でした。 

見たこともないやうな紅葉の景色が眼前に繰り廣げられたのであります。それは、ブナ平にはじまり、御池からは、さらにブナ平の眞つただ中を貫いて走り、七入までは壓卷としか言へない紅葉でした。走行するバスの中からの光景ですので、まどろこしさはありましたが、もつたいなくも、川野さんと二人だけで紅葉を堪能いたしました!

 

途中から暗くなり、山の端すら判然としなくなり、漆黒の闇の中をバスはひたすら走り抜け、會津高原尾瀬口驛には六時二〇分着。まる二時間の夢のやうなバスの旅でした。 

新栃木行き、六時三六分發の電車が八分遅れてやつてきました。ホームは寒風が素通り、寒くて寒くて、ここで、擔いできた防寒具が役に立つとは夢にも思ひませんでした。 

鬼怒川驛で特急に乘り換へ、川野さんとは栃木驛でお別れし、北千住驛に午後九時二二分着。我が家には十時到着、朝家を出てから、二三三四〇歩でした。

 

なんとも、歸宅できたことが不思議なくらゐです。疲れすぎて、だいぶまゐりましたけれど、ほんとうに貴重な體驗をすることができました。川野さん、素晴らしい尾瀨に連れて行つてくださり、まことにありがたうございました! 

 

今日の寫眞・・〈尾瀨トンデモ紀行(六)〉 ブナ平の紅葉。バスの窓越しの光景なので、寫眞として不滿足ですが、それでも雰圍氣は傳はつてきます。それと會津高原尾瀨口驛。 

 

今日の讀書・・〈尾瀨トンデモ紀行〉を書き終へ、つづいて、『史料綜覽』 と 『日本紀略』 を讀みつづけました。