二月廿二日(水)庚辰(舊正月廿六日 晴のち曇り

 

今日の讀書・・昨夜、また夜更ししてしまひました。昨日、神保町の東陽堂でたまたま手に取つた、中山正善著『六十年の道草』(天理敎道友社)が、とても興味深くて面白かつたからです。といつても、信仰のことではなく、「書物のこと」と題した一章が、それこそ有名な 《天理圖書館》 の藏書がどのやうにして収集されたかの裏話になつてゐたからです。 

中山正善は天理教の「二代眞柱」で、書物収集は、「一代眞柱」中山眞之亮の時からはじめられてゐたさうです。どれだけすさまじい収集といふか買ひ方がなされたかは、附録の、「愛書ものがたり 反町茂雄氏、八木敏夫氏との鼎談」の章に詳しいのですが、それによると、まだ反町さんが、東大を出られて一誠堂にゐた頃のこと、二年後輩の中山正善さんが來店されたと思つてください。 

 

中山 何を買ったか、一つしか覚えてないんで・・・・。 

反町 たいへんご機嫌がよくて、どんどん本を買ってくれるんですよ。こっちは驚いてしまって、思いがけない高いものを買われるんですが、よく覚えてるのは、『大日本古文書』の揃ったのが棚の上に積んであるのを、その頃の売価で二百八十円か三百八十円のを買われたんです。 

その頃としてはたいへんな金額ですから、それを簡単に「貰いましょう」と言われるんでびっくりしてしまって、これはどういう人だろう、・・・ 

そして、もっと何かいい本はないかって乗り気なんです。(中略) 

みんなでいくらになると言われて、合計を計算したらたしか三千七、八百円になりましたよ。今のお金にすれば七、八十万円(昭和五十二年の物価にすると約四百五十万円)にもなるでしょう。大きな金額です。 

 

と、まあ、ぼくが買ふ本代なんて可愛いもの、ではない、比べものにならないですね。ちなみに、『六十年の道草』 は、四〇〇圓でした。 

あツ、それと、これを讀んでゐて、シルクロードを探檢した、大谷光瑞を思ひ出しました。どちらも宗敎團體の代表ですからね、まああ、お金が豊富、いや資金には事缺かないといふか、打ち出の小槌でもお持ちなのかなあと思つたしだいでありました。 

 

*補注一・・中山正善(しょうぜん) 天理教二代真柱(しんばしら)。奈良県生。初代真柱である中山真之亮とたまへの長男として出生。東京帝大文学部宗教学科卒。大正14年父のあとを継いで管長に就任。戦時中は宗教統制の強化のため、天理教の神話「泥海古記」の廃棄を余儀なくされるが、昭和2、3年に天理教原典『おふでさき』『おさしづ』を、昭和24年に『天理教教典』を刊行し、今日の天理教学の体系を確立するとともに原典に基づいた教理の普及を行った。天理教図書館を設立し、稀覯本の収集や、また柔道や水泳などスポーツの振興にも力を注いだ。昭和42年(1967)歿、62才。 

 

*補注二・・大谷光瑞(おおたに こうずい) 浄土真宗の僧。西本願寺二十二世。二十一世光尊(明如上人)の子。法号は鏡如。学習院大卒。インド・ヨーロッパ諸国を外遊し、また三回にわたる大谷探検隊の派遣により、中国・シルクロードから貴重な仏教資料をもたらす。引退後は機関誌『大乗』を刊行、仏教の立場から国家主義的思想を以て政治・経済・社会を論じた。昭和23(1948)寂、73才。 

 

昨日の朝刊に、「くずし字に親しむ古文書の基礎」といふ講座の宣傳があり、受講生を募集してゐたので、申し込みの電話したら、今日そのパンフレットが屆きました。と思つたら、受講料支拂ひに關する用紙だけで、講座の内容のカタログなどは一切なし。それで、すぐ連絡したら、別々に發送してゐるのだといふのです。 

いや、まだ警戒は解いてゐませんが、これは新種の詐欺かなと思ひましたよ! 

 

今日はそれで、『歴史紀行五 平安京編一』 のワード版作成をわづかに繼續しただけでした。 

 

今日の寫眞・・中山正善著『六十年の道草』(天理敎道友社)と、“GRⅡ”で、ココ初撮り。