七月十六日(火)舊六月十四日(甲寅 雨のち曇天 

今日は朝一で、グレイを動物病院につれて行き、檢査をしていただきました。といつても、行きなれてゐる妻が一人で行つてくれたのですが、血液檢査の結果はウイルスもエイズも白血病も白、クリアでした。それでワクチンを打つてもらつて歸つてきました。 

といふことは、モモタにもココにも感染した病氣はないといふことで安心しました。もう一、二回ワクチンを打てば完璧です。で、目のはうは、炎症をおこしてゐるやうなので目藥を出してくれました。大事にはならないやうです。ホツとしました。 

グレイは、午前、午後を通じて、一、二時間おきにトイレをさせ、専用のご飯を食べさせるためにケージに入れるだけで、夜まで書齋で遊ばせました。すると、モモタとココが晝寢をしてゐるとグレイも靜かになり、一緒に晝寢です。ときにはぼくの胸の中に入れてあげてもおとなしく安らいでゐます。これがモモタとココでは味はえなかつた感觸ですね。いとほしさがつのります。

 

病院といへば、あしたはぼくの通院日です。半年に一度のペースメーカー外來ですから、とくべつな準備も覺悟も必要ないのですが、また、電池があとどれだけもつかだけを調べるだけで濟まされるかと思ふとちよいとなさけない。 

讀書は氣晴し。今日も、森詠さんの 『刺客見習い 剣客相談人17』 を讀みつづけ、讀み終るや否や、『秘剣 虎の尾 剣客相談人18』 に入りました。『刺客見習い』 では、長州藩の「吉田松陰の影響下にある」テロリストから「攘夷論」を洗腦のごとくに吹き込まれて事件を起こした少年が、劍客相談人たる長屋の殿さまたちに助けられ、いくら諭されてもかたくなだつた少年の心がしだいに開かれ、正義とはなにかをさとり、大人になつていく姿を描いてゐるところが實にうまいと思ふ。本書では特にさう感じた! 

「毛倉野日記(五)」(一九九四年八月) を寫し終へ、今回は十一名の方々に送ることができました。 

 

七月十七日(水)舊六月十五日(乙卯・望 曇天、午後晴れる 

今日は通院。しかし豫約時間は午後なので、午前中は子ネコのお相手。三匹がますますなかよしに、といふか走り回るグレイにつられてモモタとココも遊びだしました。猫じやらしが好きなんですねえ。ココなんか見向きもしなかつたのに、グレイに負けてなるものかと飛び回つてゐます。ココにくらべると、モモタはやはりお兄さんだけあつて、目はきよろきよろさせながらもどつしりとかまへてゐます。でも寢るときは三匹三樣、グレイまでもぐつすりです。これでグレイも受け入れられて安心、なんですが、食事とトイレを別にさせてゐるので、數時間おきにグレイをケージに入れて用をさせます。食べて飲んで排泄し、時にはそのまま休んだりしますが、飽きるとケージから出たくてミャーミヤーと鳴きます。 

 

妻が外出先から歸つたのを合圖に、ぼくが家を出ました。出がけに、堀切地區センターで期日前投票を行ひ、晝食は上野驛の例のあんかけ五目焼きそばです。麺を少なめにしてもらつて完食。殘すよりずつと氣持ちがいい。 

新橋驛からは病院まで歩きました。大した距離ではないので散歩のつもり。ところが、今日にかぎつて氣温が高く、しかも日が差してきました。慈惠大病院についたときには汗がびつしよりでした。しかも、受付をしたところ、心電圖檢査をしてからの診察であつたのでした。忘れてゐました。檢査技師の方に汗で失禮してしまひました。 

でも、ペースメーカー外來の診察の結果は良好で、「マイケアリンクモニタ」の記録によると、昨年十月からの九か月、問題となるやうな不整脈は出てゐないといふことを聞いて安心しました。そのわりには體調がいまいちなんですと訴へましたが、若い先生、何も言ひませんでした。次回は來年四月、さうだ、電池の壽命はあと五年と言つてゐました。ペースメーカーを胸に植込んでからすでに三年になるのでした。 

それと、氣になつたのは、待合室に、《ご存じですか? BNP》 と張られた掲示です。ぼくはご存じではなかつたので、「“心臟の負担”の程度をみる血液檢査」といふのを、來週のみか先生の診察のときに聞いてみたいと思ひました。 

歸路、再び新橋驛まで歩き、上野經由でまつすぐ歸宅しました。子ネコたちが待つてゐるからです。行つて歸つて八〇〇〇歩、まあまあの散歩でした。 

 

森詠さんの 「剣客相談人シリーズ」、つづけて借りてきてと妻に言つたら、19から23まで五册も持つてきました。氣晴しといつても、いくらなんでもと思ひましたが、この際ですから、のんびり樂しむことにしませう。 

と思ひつつ、『秘剣 虎の尾 剣客相談人18』 を讀み終へ、次に進む前に、『圓光大師傳 第廿七』 を讀み終はらしました。蓮生房熊谷次郎直實の往生の話しでした。 

 

七月十八日(木)舊六月十六日(丙辰 曇天 

終日ぼんやりと讀書。「剣客相談人シリーズ」と、〈蟲めづる姫君〉を交互に讀みすすむ。が、どうも氣がのらない。 

グレイが來てからといふもの、古本市にも行つてゐないし、せめて散歩をと思ふけれども、いつ降りだすかわからない天氣では出歩く氣にもならない。 

でも、三匹を見てゐるとあきない。ラムは犬だつたから一匹で十分幸せだつたけれども、ネコの場合は一匹より二匹、二匹より三匹を飼つてみると、これを多頭飼ひといふのださうだが、ネコも幸せさうだし、見てゐるこちらも樂しい。

 

今晩はじめて、グレイをネコ部屋に戻すことをせず、モモタとココと同じ書齋に入れたまま過ごさせてみました。ただ、トイレのことがあるので、ぼくが寢るときにはグレイをケージに入れました。モモタとココのトイレでまだしないだらうし、ケージを開け放したままでは、モモタとココが入つてグレイのトイレを掻き回すおそれがあるからです。逆に、モモタとココが食事をする場合には、グレイをケージに入れないと、グレイがお二人さんのご飯を食べてしまふのです。數カ月は、子ネコには子ネコ用のご飯でないといけないのださうです。

 

ラムを飼ひはじめたときには、ラムの行動を理解して一緒にどうしたら生活していけるか、まつたくの暗中模索でしたから、四、五十册の參考書を讀んだけれども、ネコについては二、三册流し讀みしたくらゐ。具體的な飼ひ方がわかればいいといつたところです。

 

*おだやかな三匹。ココなんて、一番リラックスした姿で晝寢です!

 


 

 

七月十九日(金)舊六月十七日(丁巳 曇天日中日差し、また小雨 

グレイが、おとなしく一夜を過ごせたやうなので安心しました。モモタとココに食事を與へ、グレイにもケージのなかで與へてからグレイを開放してあげました。 

どうにか、ココとグレイの上下關係も定まつたやうだし、グレイのおかげでモモタもココも活氣がでてきた感じがします。 

あとは、食事を別々にあげる時間を氣にするだけです。トイレだけにしたケージには、モモタもココもにほいをかいだだけで、荒らすまねはしさうにはありません。それでゐてグレイは自分から入つてトイレをしてゐますから、一歩も二歩も前進。もしかすると、モモタとココのトイレですることも考へられるので、さうなつたら、ケージのトイレは不用になり、ケージはグレイの食事専用となるわけであります。 

といふわけで、これではしばらく外出もままならなくなりさうです。

 

まあ、それでどうにか、『堤中納言物語 〈蟲めづる姫君〉』 を讀了。これは短編小説としてたいへん面白く讀みました。「蝶めづる姫君」といふ風變はりな姫君だけれども、その姿は、「人間は自然体であるのがいいと言って、眉を抜かず、お歯黒もし」ないといふ、いはばとても現代的な女子です。その女子が、蟲を觀察するのが大好き。それも、ただの蝶ではなく、毛蟲から蝶へと變態してゆく様を見とどけたいといふのですから、これは歴女ならぬ理科女、まさに蟲めづる女子のお話でした。 

 

七月廿日(土)舊六月十八日(戊午・土用 曇天一時雨 

今朝も朝食は卵かけごはんでした。どうやら定着してきたやう。やはり力になる。 

ところで、一昨夜はケージの中に入れて過ごさせましたが、夕べは、グレイを放したままにしておきました。朝みたら元氣さうでした。モモタとココに受け入れられたやうで、もう安心でせう。食欲もあるし、ウンチはトイレにモンブラン状態! 晝間みてゐてもときどきココととつくみあひもしてゐるし、とにかく元氣でめげない子です。

 

それにしても、きょうもしんどかつた。昨年の具合がわるかつたときのことを思ひ出してしまふ。やはり氣壓のせいなのだらう。臺風も近くに來てゐるし、夏がいやな季節になるなんて考へてもゐなかつた。 

 

昨夜、森詠著 『暗闇剣 白鷺 剣客相談人19』 を讀了。物語の舞臺は江戸、時代は幕末。京都を追はれた長州藩士はじめ過激な尊攘派テロリストの、江戸の町を混亂させやうとする策謀に抗して、その陰謀を阻止すると言ふのが本シリーズ數册前からのテーマになつてゐます。今回は、小栗上野介の製鐵所建設に對する妨害工作を阻止する話も加はり、幕末史の一コマといつた感じでした。結果を知つてゐるだけに、この時代を冷靜に見ることが難しいのですが、劍客相談人らの活躍には拍手を送りたい。 

 

また、『堤中納言物語 〈ほとほとのけさう〉』 讀了。葵祭で親しくなった小舎人童と女童の戀を發端として、小舎人童は親しくなるにつれ、女童が仕へてゐる姫君の窮状を目の當たりにして、自分の主人の頭中將が、この家のお婿さんになつて助けてあげられたらなあと思ふ一方、同じく頭中將に仕へる男が、小舎人童の仲立ちで女童が仕へる家の女房の元に通ふやうになり・・・、といつた、主從三組、それぞれ身分相應の戀が進んでゆく話です。 

 

アマゾンを通じて求めた 『源氏物語 湖月抄()(講談社学術文庫) が屆きました。上は古本市で三〇〇圓で求めましたが、これは八四〇圓。それに配送料および手數料が八〇〇圓でなんと合計一六四〇圓! でも、これでも安いと思つて購入しました。ばらばらにして使ふので状態は良くなくてもいいと思つてゐましたが、ほとんど新品でした。 

まあ、アマゾンで買ふのはできればやめたい。さう、これが七月に入つてはじめての買物でした。  

 

 

七月一日~卅一日 「讀書の旅」    『・・・』は和本及び變體假名本) 

七月二日 寺内大吉著 『念佛ひじり三国志(五) 法然をめぐる人々』 (毎日新聞社) 

七月五日 『圓光大師傳(法然上人行状畫圖) 第廿五・廿六』

七月六日 〈このついで〉 (『高松宮藏 堤中納言物語』 所収 日本古典文学会) 

七月七日 寺島恒世著 『百人一首に絵はあったか 定家が目指した秀歌撰 (ブックレット“書物をひらく”⑯) 』 (平凡社)  

七月十一日 瀬戸内寂聴著 『「源氏物語」を旅しよう―古典を歩く』 (講談社文庫

七月十四日 諸田玲子著 『王朝小遊記』 (文春文庫

七月十四日 森詠著 『風の剣士 剣客相談人16』 (二見時代小説文庫) 

七月十六日 森詠著 『刺客見習い 剣客相談人17』 (二見時代小説文庫) 

七月十七日 森詠著 『秘剣 虎の尾 剣客相談人18』 (二見時代小説文庫) 

七月十九日 〈蟲めづる姫君〉 (『高松宮藏 堤中納言物語』 所収 日本古典文学会)

七月十九日 森詠著 『暗闇剣 白鷺 剣客相談人19』 (二見時代小説文庫) 

七月廿日 〈ほとほとのけさう〉 (『高松宮藏 堤中納言物語』 所収 日本古典文学会)