二〇二二年九月(長月)一日(木) 舊暦八月六日(丁巳) 曇天時々雨
入院二日め。朝、主治醫が來て、早く退院できるやうにしませうと言ふ。それでぼくはほんとうに盲腸炎だつたのですか、と聞いたら、わづかに腫れてゐて、今後どうなるかを見定めたいと言ふ。ではそんなていどでどうしてあんなにも痛かつたのか? それは聞きそびれてしまつた。
考へると、あの痛みといふか苦しみは、盲腸によつて引き起こされたのではなく、きつと晝間食べた肉にあたつたにちがひない。結果的に盲腸炎が發見されてめでたしだつたけれど、二度と味はいたくない苦しみである。昨日から繼續して點滴注射。
昨日いつたん歸宅した美知子があとでとどけてくれた、アマゾンからとどいた色川武大の 『引越貧乏』(新潮文庫) を一日よみふける。面白いといふかもの珍しくよみつづける。著者五十歳頃の回想をよんでゐると、今のぼくよりも年寄りくさい。
初めての晝食は、五分粥(二五〇グラム)を半分のこしたほかは、おかずのタラの味噌煮も大根のそぼろ煮、茄子の煮浸しもすべて食べた。旨くはなかつたが食べられた。
點滴と心電圖モニターが胸から取りはずされたのは夕方。まる一日半の束縛から開放されて、病棟のシャワーに入ることができた。
夕食は六時すぎ、トレイには、五分粥に中華スープ、豆腐の旨煮、マヨネーズサラダと杏仁豆腐で肉氣なし。たうぜん吐き氣を覺えたけれど、どうにかしてほとんど食べてしまつた。樂しい食事どころか苦行である。
食後、横になつて本を開いたつもりが寝入つてしまひ、消燈時間ですよといふ看護婦さんのこえで起こされ、それから眠られず。
九月二日(金) 舊暦八月七日(戊午) 曇天朝夕雨
入院三日目。血液採取ですとの看護婦さんのこゑでめざめる。終日時間をおいて點滴注射がつづく。
朝食は、五分粥、玉ねぎの味噌汁、プレーンオムレツ、青菜の煮浸し、牛乳にパックケチャップ。
晝食は、全粥、鮭の西京焼、うの花炒め、白菜の辛子和え、ふりかけ。
夕食は、全粥、はじめてのお肉のハッシュドビーフ(七〇グラム)、マセドアンサラダ、ヨーグルト、果物(マンゴー)。
ところが、ひるごろ主治醫がやつてきて、明日退院です、といふ。退院の理由は、今朝の血液檢査の結果、白血球の値が下がり、盲腸のはれもおさまつたから、といふことであつた。外來通院の豫約を入れたといふので安心したが、なんだか半信半疑である。。
色川武大 『引越貧乏』(新潮文庫) 讀了。
九月三日(土) 舊暦八月八日(己未) 曇天一時晴
朝食。パン、ジャム、フレンチサラダ(蒸)、果物(マンゴー)、ジョア、ドレッシング。
夕べからトイレで尿量をはかる必要がなくなり、すがすがしく用便をすますことができるやうになつた。ただ、まだ氣持ちよく大便が出ない。
退院は晝。最後の點滴後、荷物をかたづけてからひと讀書。坪内祐三 『文庫本を狙え!』(ちくま文庫) をよみすすむ。あれこれよみたい文庫本が現れてこころがさわぐ。
歸宅すると、泉鏡花 『歌行燈』(角川文庫 舊字舊假名) がとどいてゐた。すでに岩波文庫ではもつてゐるが、やはり角川文庫の古い版でよみたい。と思つて開いてみると、なんとめずらしく岩波のはうが字が大きくてよみやすい。むろん岩波でよみはじめた。
晝食も夕食も平常とかはらず、適度にたべた。
ところで、こちらは胸をときめかせて書齋(猫部屋)にはいつたところ、三匹が三匹とも、いつもとかはらず、ことさらうれしさうでもなく、のそりのそりと近よつてきた。なでなですりすり、ぼくのはうがうれしくて順番にだきよせた。
九月四日(日) 舊暦八月九日(庚申・上弦) くもり
終日横になつてすごす。
午後、久しぶりに純子さん來りて、整體をほどこしてくださる。それにしても、お腹の調子がよくない。原因をしりたい。
昨夜、坪内祐三 『文庫本を狙え!』(ちくま文庫) 讀了。つづけて、同じ著者の 『文庫本福袋』(文春文庫) にはいる。この内容は雑誌に掲載してゐたつづきもの。ますますよみたいものがふえてきさう。
九月五日(月) 舊暦八月十日(辛酉)
お腹の調子がよくない。入院中に何度も訴へたのに、盲腸とわかつてからは聞いてもくれずに退院させられてしまつた。くやしい。
泉鏡花 『歌行燈』 をよみはじめたが、結局斷念した。まつたくわからなし、つまらない。さういへば 『高野聖』 をなんども挑戰しながらやはり斷念したことを思ひ出した。それで、ローレンス・ブロックの 『償いの報酬』(二見文庫) をよみはじめた。
九月六日(火) 舊暦八月十一日(壬戌)
今日は新橋の慈惠醫大病院へ通院。血液檢査と心電圖檢査につづいてミカ先生の診察。まづ、この一週間の報告。ところが心臓の檢査の結果は順調で、むしろBNP値は良好、ワーファリンの値に變化があつたくらゐ。晝食は地下の松壽庵でたぬきそば、半分ほど食す。
寄り道せずに歸宅。
九月七日(水) 舊暦八月十二日(癸亥)
夕べ8時頃また腹痛と吐き氣があり、ひどくなる前に再び靑戸の慈惠醫大病院(葛飾醫療センター))に飛び込んだ。が、それから痛みが急に襲ひかかり、もだへ苦しんだけれど、痛みどめの薬のおかげで、夜中にはおさまり、再び同じ病棟に入院。やはり盲腸らしいのだが、今回は胃カメラをのまうといふことになり、胃腸を診てもらへさうなので一安心。
また、齒科の豫約をキャンセルしなくてはならない。ひげ淳
九月八日(木) 舊暦八月十三日(甲子・白露)
病棟に入院してからは、先週とまつたく同じ點滴療法。病室は今回は北西の角、右手に中川がのぞめる。やはり食事はぬき。二日つづけてはつらかつたけれど、空腹にはなれてゐる。
ところが、夕方、また腹が痛くなり、先週の夜と一昨日の夜よりはひどくなかつたけれど、數時間もだへ苦しんだ。痛めどめが効き、ほんとうに助かつた。明日の胃カメラが待ち遠しい。
九月九日(金) 舊暦八月十四日(乙丑)
夕べもだいぶ苦しかつたけれど、すぐに痛みどめの點滴をうつていただいたので、數時間もだへただけですんだ。そして今朝、といつても晝近くに胃カメラをのみ、その結果、胆嚢にできた結石が原因の痛みのやうだとわかつた。以前新橋の本院で、結石がどうのかうの言はれたことがあるので、それが暴れだしたのかも知れない。まあ、痛みの正體がわかれば、對處の仕方も集中できさうだから、とりあへず安心。
食事は夕食から、まる三日ぶりにいただくことができた。ほぼすべて食べることができた。
午後、美知子が新しい着替へと、今日屆いた色川武大の 『いずれ我が身も』 をもつてきてくれた。入院してから、ローレンス・ブロックの 『償いの報酬』 をよみすすむ。
九月十日(土) 舊暦八月十五日(丙寅・滿月)
6時に目がさめ、晴れ渡つた外の景色を氣持ちよくながめ、ローレンス・ブロックの 『償いの報酬』 をよみ終へる。マット・スカダー・シリーズのしめくくりといつた内容だつた。
朝食は8時。五分粥、大根の味噌汁、焼魚、茄子の煮浸し、牛乳。めずらしく完食!
食べ終はつたところに主治醫の久保田先生がこられ、こちらの具合ひを聞いてから、では明後日に退院しませうと告げられる。胆石は今すぐどうかうする状態ではないやうなのである。むろん痛みの再發をおそれるが、すぐに手術といふわけにもいかないやうだ。食事指導があるといふので、妻にその旨と時間を知らせた。
また食後、別の擔當醫の赤岡先生がこられ、胆石は手術でとるしかないが、食事のさい「脂質」をとらなければ、胆石も靜かにしてゐるとのことで、食事療法といふことになりさうである。また、外來に通ひながら手術について考へていきませうとも言はれた。
點滴がはじまり、『文庫本福袋』 とともに、『いずれ我が身も』 をよみはじめる。
晝食は、全粥、ミートローフ、ニンジン大根、オクラのおかか和え、フルーツゼリー。粥を半分殘した以外おかずは完食。
午後三時間ほど熟睡。夕食はすすまず、半分は殘してしまつた。
今夜は十五夜だといふので、談話室に行つたけれど、室内が明るくて寫眞が撮れない。で、近くの南面する空き部屋にはいつて撮つてみたが、携帶では鮮明には撮れつこない。
夜八時頃、待ちに待つた大便が出て、すつきりして眠ることができさうだ。
九月十一日(日) 舊暦八月十六日(丁卯)
夕べは寢つかれなかつったので、デジタルウォークマンとラヂオを聞きながらうとうと。それでも六時起床、談話室にテレビカードを買ひに病棟の北から南角までわづかながら散歩。
朝食前といふのに主治醫の久保田先生が樣子をうかがひにこられた。また痛みが襲ふかも知れないと、左腕に刺さつた點滴注射の針はまだ抜かないでおこうなどと言つてびくつとさせられた。
朝食は食パンで完食。晝食は讃岐うどんだつたが、どうにか半分を食す。
午後いちばんにシャワーをつかつたが、左腕に刺さった注射針が氣になつて曲げられず、顔もろくに洗へない。夕方になつて針が抜きとられたが、シャワー前だつたらよかつた。
夕食は、また食欲がなくなり、ご飯も鶏肉トマト煮も南瓜ドレッシングサラダもみな半分も食べられなかつた。
明日は退院。色川武大の 『いずれ我が身も』 讀了。見につまされる内容だつた。
九月十二日(月) 舊暦八月十七日(戊辰) くもり
朝食後、主治醫が来て、朝食前に採血した檢査の結果に問題がないことがわかつたので、退院してもいいことになつた。その時、胆石について、手術して欲しいことを告げると、それは外來で判斷しませうとなつた。手術ができないわけではなく、日程の都合のやうである。安心して歸宅できる。
九時半、迎へに来てくれた妻とともに榮養士の村岡さんから三〇分ほど指導を受ける。要は脂質の高い食品を避けるようにといふことで、鹽分につづいての注意事項だ。
歸宅後、シャワーを浴び、猫たちを抱きしめ、こころをかよはせる。
晝食は靑砥驛までドライブし、三崎丸でお好みのにぎり壽司をいただいた。
九月十三日(火) 舊暦八月十八日(己巳) 晴
退院早々散歩に出る。日暮里驛下車、谷中墓地を經て上野公園まで、いつもの散歩コースである。秋晴れのもと、汗ばむほどだつた。まあ、食事療法とともに、消化をよくし、體力をつけるためだが、やはり氣のもちかただと思つた。歸り、堀切菖蒲園驛前の青木書店に立ちより、この半月の出來事を聞いていただいた。
夕食はといふと、うな丼だつた。とはいへ、一尾を三人で分けて食べるぶんには、脂質の量からいへば問題はないと妻は言ふ。
今日の外出・・・七三一〇歩
九月十四日(水) 舊暦八月十九日(庚午) 晴
朝、コンビニに行き、退院時にいただいた 數枚にわたる 「胆石症の食事療法」 をコピーし、常に手もとにおくことにする。それによると、魚介類(八〇グラム)で脂質含有量が多い筆頭はさんま、つづいてうなぎ、ぶり、いわし、さば等。肉類(七〇グラム)ではロース、ベーコン、ひき肉、ウインナーなど。ヒレ肉は少ない。その他、油揚げ、牛乳、チーズ等々。香辛料やコーラ、サイダー、コーヒーやお茶、アルコールも避けよとある。
まあ、「一日の脂肪摂取量は三〇グラム以内を目標に」と書かれてあるので、鹽分(六グラム以内)とともに氣をつけねば。要するに、わづかな量ならば食べられないものはないことがわかつたわけでもある。
黒川博行 『疫病神』(新潮文庫) 再讀了。つづいて、シリーズ二册目の 『国境』 はすでに二度よんでゐるので、三册目の 『暗礁』 に入る。
九月十五日(木) 舊暦八月廿日(辛未) 晴
ひと月ぶりに床屋へ行つてさつぱりとし、お花茶屋驛まで歩いて古本屋をのぞく。さらに靑砥驛まで足をのばし、買ひ物に出てゐた妻と待ち合はせ、驛前のそば屋で山かけそばを食べる。買ひ物がのこつてゐるといふ妻と別れ、久しぶりに竹内書店を訪ねてみたら、圖書館で借りてよんではゐたが、文庫本で持つてゐなかつた黒川博行の 『泥濘(ぬかるみ)』(文春文庫) があつたので求めた。疫病神シリーズの第七册目である。
今日の外出・・・三五二〇歩
今日は三週間ぶりの齒科通院である。十一時から一時間半、新しい入れ齒のための基礎となる金属を設置し、次いで上下ともに齒形をとつた。いよいよである。
歸路、神保町に行き、久しぶりに小諸そばで山かけそばを食べ、それから古書會館の古本市を訪ねた。また、御茶ノ水驛前で開催中の “御茶ノ水ソラシティ古本市” を見たけれど、どちらも目ぼしいものはなかつた。
ところが、綾瀨驛で妻を待つあひだに立ち寄つたブックオフで、探してゐた山田風太郎の 『人間臨終図卷 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』(徳間文庫) と ダヴィド・ラーゲルクランツ 『ミレニアム6 死すべき女 上下』(ハヤカワ文庫) が手に入り、ほくほくして歸宅することができた。
今日の外出・・・五九九〇歩
終日讀書。黒川博行 『暗礁(下)』(幻冬舎文庫) 讀了。
終日讀書。昨夜よみはじめた、阿佐田哲也 『麻雀放浪記㈠青春篇』(角川文庫) をよみすすむ。ぼくはまつたく麻雀なるものをしらないけれど、多くが絶賛してゐるやうに面白い。
九月十九日(月) 舊暦八月廿四日(乙亥) 晴のち降つたりやんだり
妻にせかれて、代々木公園でおこなはれるといふ 「安倍元首相国葬反対! 9・19大集会」 に出かけた。あちこちの集會にさんかしたことはあるが、代々木公園ははじめて。代々木公園内だらうとたかをくくつて出かけたら、公園の中央広場の中にまぎれこんでしまひ、何人もの人に尋ね尋ねして、大變な大回りをして、やつと野外ステージのあるイベント會場へ到着。へとへとで雨のなか坐りこんでしまつた。
阿佐田哲也(色川武大) 『麻雀放浪記㈠青春篇』(角川文庫) 讀了。つづいて、『麻雀放浪記㈡風雲篇』 をよみはじめる。
今日の外出・・・六八二〇歩
九月廿日(火) 舊暦八月廿五日(丙子) くもり一時雨
今朝、ラジオを聞いてゐたら、昨日の集会とデモの記事を載せてゐるのは東京新聞と朝日新聞だけだと、森本さんが憤慨してゐた。この分ではテレビでは無視されるだらう、と思つたとほり、どこの放送局でも一切言及がなかつた。こんな時代になつたのだ。
終日讀書。阿佐田哲也(色川武大) 『麻雀放浪記㈡風雲篇』(角川文庫) 讀了。つづいて 『麻雀放浪記㈢激闘篇』。
また、荒俣宏監修 『知識人99人の死に方』(角川文庫) をよみはじめてゐる。衝撃的な事實の羅列だ。
九月廿一日(水) 舊暦八月廿六日(丁丑) 曇天
終日讀書。
阿佐田哲也(色川武大) 『麻雀放浪記㈢激闘篇』(角川文庫) 讀了。つづいて 『麻雀放浪記㈣番外篇』 に入る。
食事がたのしみだつたのに、退院後は臆病になつてしまつた。鹽分に加へて脂肪分の制限。もともと食べる量などたかが知れてゐたのに、ますます少なくなり、體重も、六十二キロにならないやうに氣をつかつてゐたころとくらべると、五キロから六キロも減つてしまつた。そば屋では天ざるが好物だつたけれど、退院以來とろろそば(山かけそば)にかへてしまつた。トロロである。
阿佐田哲也(色川武大) 『麻雀放浪記㈣番外篇』(角川文庫) 讀了。麻雀をまつたくしらなくても面白かつたけれど、麻雀をやる人はこたへられないだらうな。
荒俣宏監修 『知識人99人の死に方』(角川文庫) 讀了。つづいて、山田風太郎の 『人間臨終図鑑』 が待つてゐるけれど、ここで休憩。
九月廿四日(土) 舊暦八月廿九日(庚辰) 曇天のち小雨
ダヴィド・ラーゲルクランツ 『ミレニアム6 死すべき女 上』(ハヤカワ文庫) 讀了。
九月廿五日(日) 舊暦八月卅日(辛巳) 晴
ダヴィド・ラーゲルクランツ 『ミレニアム6 死すべき女 下』(ハヤカワ文庫) 讀了。これでミレニアム・シリーズは完結。ちよいとものたりなかつた。
つづいて、マイクル・コナリー 『夜より暗き闇』(講談社文庫) をよみはじめる。
九月廿六日(月) 舊暦九月一日(壬午・新月) 晴
お晝を食べに外出する。まづ上野驛のいつもの壽司屋を訪ねたが、ねらつてゐたものがなかつたので(まあ季節的に無理となつたのだらう)、電車を乘り繼いで神保町に行き、古書店をのぞきのぞき専大通まで歩いて、成光さんに入り、ラーメンをいただいた。ちよいと味が濃いがいつ食べてもうまい。
おかげで、數軒の店をのぞいただけで、たくさんの文庫本を買ひ込むはめになつた。坪内祐三さんの 『文庫本を狙え!』 と 『文庫本福袋』 にそそのかされたことはまちがひない。だが、それとは別に、夏目漱石の 『坊つちやん』 の舊字舊假名本(新潮文庫)をみつけたのはうれしかつた。『坊つちやん』 の舊字舊假名本は他の文庫で見かけたことがない。
今日は、ちよいと脂肪分と鹽分を攝りすぎたやうなので、夜ヒヤヒヤしながら就寢。
今日の外出・・・四九六〇歩
九月廿七日(火) 舊暦九月二日(癸未) 晴
今日は通院日。靑戸の慈惠醫大葛飾醫療センターへ退院後はじめての外來であつた。數年前にはじめてこの病院を訪ねたときには、じつにきれいで快適なつくりだと思つたが、新橋の本院が新しくなつてみたら、こちらは手狭に思へてしかたない。それにしてもだいぶ待たされて、外科の岩瀨醫師の診察、といふより、ぼくのはうからあれこれ質問して、これからの方向がはつきりしてきた。手術かクスリで胆石を取り去りたいと訴へると、先生は緊急を要することではないので急ぐ必要はない、「胆石症の食事療法」もゆるめていつてもさしつかへなく、二か月後にエコー檢査をして樣子をみようといふことになつた。ぼくのからだにふれてみて、いかにやせてゐるか、胆石が暴れるやうな大食ひをしてゐないことがわかつたにちがひない。いちおう胆石をちらすクスリを處方してくれたけれど、その効き目については先生も懐疑的なご樣子だつた。ただひとつ最後にお願ひしたのは、また疝痛がでた場合にはすぐに飛んでくるからよろしくたのむといふことであつた。
歸り、妻と靑砥驛により、更科で天ざるを食べ、買ひ物をして歸宅した。
『文庫本福袋』 と 『夜より暗き闇』 をよみつづける。
今日の外出・・・二〇四〇歩
マイクル・コナリー 『夜より暗き闇(上)』(講談社文庫) につづいて、『夜より暗き闇(下)』 も一氣に讀了。ボッシュ・シリーズ第七册目にあたるが、今回は、ハリー・ボッシュ刑事の本名、ヒエロニムス・ボッシュと同名の畫家の 「最後の審判」 と 「快楽の園」 についての解説がはいつたりして勉強になつた。また、クリント・イーストウッド主演で映畫になつた、心臓移植をしたテリー・マッケイレブ刑事が登場し、ボッシュとともに活躍するのも樂しかつた。
晝、驛前のタカノに行き、タンメンと餃子を食べた。麺は半分にしてもらつて完食。餃子は小ぶりだがうまい。そのまま電車に乘り、京成八幡驛前の山本書店を訪ねたけれど、木曜日が定休日だつた。そのまま折り返して歸宅する。
ロバート・クレイス 『ぬきさしならない依賴』(扶桑社ミステリー) をよみだす。
今日の外出・・・二八三〇歩
九月卅日(金) 舊暦九月五日(丙戌) 晴
齒科通院。昨日の夕食時にとれてしまつた上の差し齒を修復してもらい、今日は新しい入れ齒のために再度型取り。何度も微妙に調整して終了。
古本市は高圓寺古書會館。文庫本だけがターゲットだが、面白さうなものが何册も見つかつた。佐高信 『佐高信のお墓紀行』(光文社知恵の森文庫) や、谷譲次著 『テキサス無宿』(教養文庫)、北尾トロ 『ぶらぶらヂンヂン古書の旅』(文春文庫) など。
新宿經由で町田まで行き、柿島屋で馬刺をたらふく食べてから歸宅。
今日の外出・・・五四二〇歩
九月一日~卅日 「讀書の旅」
二日 色川武大 『引越貧乏』 (新潮文庫)
三日 坪内祐三 『文庫本を狙え!』 (ちくま文庫)
十日 ローレンス・ブロック 『償いの報酬』 (二見文庫)
十四日 黒川博行 『疫病神』 (新潮文庫)
十七日 黒川博行 『暗礁(下)』 (幻冬舎文庫)
十九日 阿佐田哲也(色川武大) 『麻雀放浪記㈠青春篇』 (角川文庫)
廿日 阿佐田哲也(色川武大) 『麻雀放浪記㈡風雲篇』 (角川文庫)
廿一日 阿佐田哲也(色川武大) 『麻雀放浪記㈢激闘篇』 (角川文庫)
廿二日 阿佐田哲也(色川武大) 『麻雀放浪記㈣番外篇』 (角川文庫)
廿四日 ダヴィド・ラーゲルクランツ 『ミレニアム6 死すべき女 上』 (ハヤカワ文庫)
廿五日 ダヴィド・ラーゲルクランツ 『ミレニアム6 死すべき女 下』 (ハヤカワ文庫)
廿八日 マイクル・コナリー 『夜より暗き闇(上)』 (講談社文庫)
同 マイクル・コナリー 『夜より暗き闇(下)』 (講談社文庫)