八月六日(火)舊七月六日(乙亥・広島原爆記念日 晴、猛暑 

今日も一日どうしやうもなく暑い。といつて冷房をつけた部屋にゐれば涼しいことは涼しいけれど、それまたが自然のさわやかさとは別ものです。臺風が三つも近づいてきたから氣温がさがるとおもひきや、かへつて暑いのはどうしたわけなのか。氣壓のはうは、ここのところずつと一〇一六へストパスカルで變化なし。さあ、これからどのやうに變化していくのか、そしてぼくの體調にどのやうな影響がでるのか、結果が樂しみです。

 

つづいて、『時代小説 ザ・ベスト2019 』 を讀みはじめたところ、全一一編のうち、そのはじめの二編を讀んで、ちよいとがつかり。面白味が感じられないのです。それは、要するに人物に魅力が感じられないからとしか言へません。それにくらべて、どうせならと頁を開いた、森詠さんの 『死者の戦場』、最初のページから引きこまれてしまひますものね。いつたいどこが違ふのか。不思議です。 

 

八月七日(水)舊七月七日(丙子 晴、猛暑 

今日も暑い。本を開くのもおくくふなほどの暑さであります。昨日から高校野球がはじまり、ぼくはほとんど興味はないのだけれども、ぼ~つと見るにはいい。

 

夜になつて、「毛倉野日記(九)」(一九九四年十二月) を寫し終へ、みなさまにお送りする。 

 

八月八日(木)舊七月八日(丁丑・上弦・立秋 晴、猛暑 

今日も終日暑い。その猛暑のなか、かねてより豫定してゐたとおりに、母が、今日から二泊三日で弟の住む長野縣の佐久に出かけて行きました。一緒に行つてくれる妹と、上野驛中央改札口で待ち合はせ、二人が見えなくなると妻とともにほつとしました。 

なにせ、いちど行くの行かないがはじまると、繰り返し説明してといふか説得して準備にかからなければならないので、そのエネルーギーたるやバカにできません。ぼくが出るとけんか腰になつてしまふので、妻がなだめなだめて出かけるやうにもつていくのが、はたから見てゐてもはがゆい。ですから、どうにか送り出すことができたときには、座り込んでしまひたくなるほどでした。

 

母を妹に託したあと、銀座線で妻と日本橋に行き、コレドの中にある平田牧場でとんかつをいただきました。店内に入つて氣がつきましたが、ここは何年も前に一度來たことがあると思ひました。たしか、通りに面したガラス窓のカウンター席でいただいた記憶があります。まだ毛倉野にゐたときに立ち寄つたお店ですから、店員にこのお店がいつできたかを聞いたら、コレドが出來たと同時だから、十四、五年前だと言ふのです。それなら勘定はあひます。美味しさはそのときとかはりありませんでした。

食後は別行動。ぼくは直歸し、子猫を相手にぼ~つとしてゐました。 

さう、また高校野球をつけてゐたら、面白いことを發見しました。二點リードしてゐたチームが守りのとき、相手の打球を受けとめたはいいけれど、一塁に投げた球がそれてしまひ、ヒットとなつたときから、いきなり崖から落ちるやうにして、同點にされ、さらにはリードをゆるして、たうとう敗北してしまひました。ぼくには、あの無造作な投球ひとつで負けたとしか思へませんでした。人生にもさういふことがあるのかも知れない。

 

氣壓が少し變動しだしました。一〇一六・五だつたのが、今朝は一〇一五にさがりました。一〇一五へストパスカルといふのは、氣壓としては高くもなく低くもない標準となる値ですが、目を離さないでおきませう。 

また、壓は壓でも血壓がひどく低いのが氣になります。昨日は、八三~五八。これは明らかに藥の副作用といふしかありませんが、ちよいと心配です。 

 

讀書は、森詠さんの 『死者の戦場』 を繼讀。 

 

八月九日(金)舊七月九日(戊寅・長崎原爆記念日 晴、猛暑 

母のゐぬまになんとやら、今日ははじめから妻とは別行動。暑いのは承知のうへで古本散歩にでかけました。むろん日蔭をたどりつつ、神保町の古書會館を見て、また古書店街を歩いたぐらいのもので、歩數も六七〇〇歩ほど。それも、途中で妻からシュウマイ辨當を買つてきてといふ注文が入りましたので、三田線大手町驛から長い地下道を歩いて東京驛の辨當賣場に行つたのを加へての歩數です。 

妻は好物の崎陽軒のシュウマイ辨當、ぼくは豪華な「東京驛グランスタ限定 牛肉グリル&すきやき重」を買つてしまひました。

 

求めた本は、最近は足元の關心事を埋めるやうなものばかり。次の二册でした。 

赤澤真理著 『御簾の下からこぼれ出る装束 王朝物語絵と女性の空間 (ブックレット“書物をひらく”⑲) 』 (平凡社) 五〇〇圓 

葉室麟著 『刀伊入寇 藤原隆家の闘い』 (実業之日本社文庫) 二〇〇圓 

 

ところで、今日も朝から暑いのに、グレイの元氣のいいこと。ところが、はなみずはたらすは、クシャミはするはで、歸宅後 “かめやまペットクリニック” へつれて行き診ていただきました。風邪かもしてないといふので、注射を打ち、藥をいただいて歸つてきました。まあ、風邪をひいてゐるかもしれないといつた程度でした。

 

夕食のお辨當のとき、妻が、あつたはよ、やつと探せたは、と言ふのでよく見たら、缶ビールの、なんと一三五ミリリットル缶です。毛倉野で農作業をしてゐたときに、何を飲んでものどの渇きがおさまらないとき、ぼくはほとんどお酒をやりませんでしたから、少量のビールがないかなといふときに見つけたのが、この一三五ミリリットル缶。じつに美味しくて、滿足でした。ところが、毛倉野を去つて以來見かけることがなかつたので、たいへんなつかしく、また美味しく飲むことができました。 

 

八月十日(土)舊七月十日(己卯 晴、猛暑 

今日は母の九十六歳の誕生日。夕方、弟の車で妹とともに佐久から歸つてきました。高崎の母の生家にも寄つてきたやうでした。。それほど疲れてはゐないやうですが、少し前とくらべると動きが緩慢になつてきました。 

また、妹の娘の彩ちやんとその子のあいちやんもやつて來て、みんなで母の誕生祝ひをしました。 

 

ぼくは日中は讀書とうつらうつらと子猫のお相手。お晝は妻の運轉で喜久家に行き、はじめてとろろそばをいただきました。妻は、暑くても寒くても玉子とじうどんが定番です。 

 

森詠さんの 『死者の戦場』 讀了。内容は荒唐無稽の話しなのに、六五〇頁! それでも面白く讀ませてくれるのが森詠さんの小説です。ちよいとですが、DC3ダコタも登場。 

*内容紹介・・・「私はとんでもないものを見てしまったらしい…きみはエウサピアを知っているか…死の使いが私をつけまわしている…」テロリストの汚名を受けた親友が不可解なメッセージと謎の箱を遺し、不審な死を遂げた。かつて深く愛した女とともに死の真相を追い始めた戦争特派員・北林のもとに、次々と襲いかかる奇怪な出来事。そして北林の前に黒い修道士の集団が姿を現した…。マルコ・ポーロが中世ヨーロッパに伝えた「死者の国・エウサピア」の伝説を巡って、パリ、アテネ、中東を舞台に繰り広げられる、新感覚の冒険ホラー小説。 

 

 


 

 

八月一日~卅一日 「讀書の旅」    『・・・』は和本及び變體假名本) 

 

八月二日 〈あふさかこえぬ權中納言〉 (『高松宮藏 堤中納言物語』 所収 日本古典文学会) 

八月四日 嵐山光三郎著 『「下り坂」繁盛記』 (ちくま文庫) 

八月五日 梅棹忠夫著 『夜はまだあけぬか』 (講談社文庫) 

八月十日 森詠著 『死者の戦場』 (小学館文庫)