十二月七日(金)舊十一月朔日・朔・大雪(癸酉) 曇天

 

今日の古本散歩はおまけつきで、八七〇〇歩でした。 

いつものやうに、神保町と高圓寺の古書會館をはしごし、短時間で見て回りまして、そのまま中央線で立川驛まで乘り、國文學研究資料館をはじめて訪ねたのであります。この邊の土地勘はありませんので、どのバスに乘つてよいものか迷ひましたが、幸ひ資料館の眞ん前に降り立つことができました。 

とても廣々とした、清潔感のある建物で、館長には、あのロバート・キャンベルさんが就任されてゐるやうです。が、ぼくの今日の目的は、開催中の特別展示 「祈りと救いの中世」 を見學するためでした。

 

ところが、展示室に入つた目の前には、特設コーナー 〈源氏物語 画帖と古写本〉 が展示されてゐて、おやおや 『源氏物語』 の諸寫本を見に来てしまつたかなと思ふくらゐ充實した寫本群とわかりやすい解説でした。

 

それはさうと、「祈りと救いの中世」 のはうも見ごたへがあり、一點一點丁寧に見て讀んで鑑賞してゐたら、すぐに一時間半がたつてしまひました。 

説明には、「展示資料を通して、当時の人々の極楽往生への祈りと地獄に対する怖れ、そして仏の救いへの切なる願いを読み解きます」とありますが、たしかに平安時代の昔からの人々のうめき聲が、蟲喰ひでぼろぼろの寫本から聞こえてきさうでした。 

『往生要集』 や 『寶物集』 をはじめ、『今物語』 に 『野守鏡』、謠曲本の 『源氏供養』 や 『葵上』 や 『一休骸骨』 と 『二人比丘尼』 なんてくづし字が讀めましたものね。漢文ばかりだと敬遠しがちですけれど、讀むだけでしたら、群書類從にありさうだといふこともわかりました。 

 

註・・・展示のみどころ 本展では、寺院に現存する貴重な古典籍を中心に、中世における信仰の実態と文学との関わりについて紹介します。国宝・称名寺聖教をはじめ、共催の神奈川県立金沢文庫や国立歴史民俗博物館、さらに多摩地域や各地の寺院に伝わる貴重な古典籍や絵画資料など約90 点を出展します。展示資料を通して、当時の人々の極楽往生への祈りと地獄に対する怖れ、そして仏の救いへの切なる願いを読み解きます。 

 

歸りは、はじめてのモノレールに乘つて、終點の多摩センター驛まで行き、小田急に乘り換へて、町田で夕食。もちろん柿島屋の馬刺をいただいて大滿足でした。 

 

ところで、今日求めた古本は、まづ 『赤穂義士の手紙』 と、赤穂大石神社發行の 『義士のおもかげ』。それと、三田村鳶魚著 『鳶魚江戸ばなし5 赤穂義士』 でした。『赤穂義士の手紙』 は、義士たちの生の声が聞こえるのではないかと期待して求めました。 

例へば、「大石内藏助より兩目付へ差出さんとしたる嘆願書」とか、「堀部安兵衛より小山源五右衛門へ東下を促すの状」とか、ほぼ月日順に一〇八通とりあげられてあり、貴重な資料でもあります。はい。