十一月十四日(水)庚戌(舊十月七日) 晴、風が冷たい

 

今日は散歩日和、古本散歩に出かけてきました。場所は早稻田大學構内で開催中の「早稲田青空古本祭」であります。 

千代田線大手町驛で東西線に乘り換へ、早稻田驛下車。歩いて五分ほどの、大隈重信鋼銅像そば。吹きさらしの場所ですから、わづかばかり見ただけで寒くなり、鼻水がとまりませんでした。それで、近くの校舎の中にあるコンビニで温かいミルクココアを飲んで小休止。

 

そのおかげで、第二ラウンドでは思はぬ發見、といふよりすばらしい掘出し物がありました。各二五〇圓の文庫本二册。それとぼろぼろの和本の山から、七册の和綴じ本が見つかりました。各三〇〇圓で、合計二六〇〇圓!

 

お晝ご飯は、南門から早稻田通りに出る手前にある尾張屋さんで、ミニかつ丼をいただきました。前回來たときには氣づかずに、普通のかつ丼が食べきれませんでした。それで今日あらためて挑戰しましたが、ミニでも美味しくいただくことができました。 

 

文庫本については後回しにして、まづは和本から調べたところをご開陳させていただきます。今日の寫眞を參照のこと。 

 

一、題簽には 『南軒雜抄』 ありますが、「此册、橘春暉(たちばなはるあきら)ノ著、『北窓瑣談(ほくそうさだん)』 ノ中抄出ナリ」といふ三十二丁の手作りの和綴じ本です。 

春暉は、橘南谿(たちばななんけい)(一七五三~一八〇五)の名。江戸時代後期の医者で、文をよくし、紀行 『東遊記』、『西遊記』(併せて東西遊記と称される) と随筆 『北窓瑣談』 が知られる。といふ、その随筆のやうですね。 

 

二、菊岡沾凉著 『諸国里人談(しょこくりじんだん)』 のうちの、「卷五之五 氣形部」といふ部分、全十六丁です。氣形は「きぎやう」と讀み、生きもの・動物のことのやうです。 奥書には、 

「寛保三癸亥正月 神田鍛冶町二丁目 東都 池田屋源助 

日本橋通三丁目 須原屋平左衛門」  とあります。 

菊岡沾凉(きくおかせんりょう)(一六八六~一七四七)は、江戸時代中期の俳人。名は房行。伊賀上野の人。若くして江戸神田に住んだ。俳諧は初め芳賀一晶につき、のちに内藤露沾門となり、江戸座の点者として活躍。博識で、俳人の伝記系譜を記す『綾錦』、『鳥山彦』、江戸の地誌 『江戸砂子』、俳諧撰集 『百福寿』、『百花実』 を編著。ほかに 『本朝俗諺志』、『諸国里人談』 などがある。 

 

三、脇坂義堂著 『賣卜先生安樂傅受』(上中下合本)。 

脇坂義堂(わきさかぎどう)(?~一八一八)は江戸後期の心学者。京都の人。手島堵庵・布施松翁について心学を修める。江戸の人足寄場の教諭方として活動するとともに、各地で心学布教をした。著「おしえの小槌」など多数。 

 

四、釈義貫 聞書 『おなつ蘇甦物語』 奥書に 「嘉永五歳子 秋写之」 とあり、一八五二年にどなたかが書き寫したもの。二十九丁。調べられたことを寫しておきます。

 

「この物語は昔はたいへん有名でした。遠方から『おなつさんのお寺はこちらですか』と当真光寺(*)を訪ねてこられた方もお一人やお二人ではありません。宝暦年間に実在したおなつという女性の稀有な体験は、釈義貫という謎の人物の流麗な筆によって活き活きと写され、安永二年(一七七三)版行されてベストセラーとなり、さらに次々と版を替えて昭和初期まで刊行される驚異的なロングセラーとなりました。」 

*・・金色山眞光寺(こんじきさんしんこうじ) 浄土真宗本願寺派 兵庫県豊岡市泉町

 

五・・・『親鸞聖人 いろは歌写』 十二丁。奥書に、「正嘉元年丁巳二月十五日 八十五歳」 とあり、これは親鸞が八十五歳の時に書いた「いろは歌」なのかなと思ひますが、如何? 内容は、いろは順につづられた敎へです。 

 

六・・句會で詠まれたなかから選ばれた句をまとめた册子、と思はれる。何とよんだらよいのかわかりません。とてもきれいで品があります。 

 

七・・最後は、源氏物語についての個人的なノートのやうな册子です。原文を寫したものかなと思ひきや、さまざまな文獻を出してきて論じてゐるやうですから、丁寧に讀んでみたら意外に面白いかもしれません。ただ、誰がいつ書いたかわかりません。明治時代以降であることは確かでせう。第一ロントンフェカロー源氏物語とか、第二セスコツマン源氏物語とか、第三ソサィヤテー源氏物語とか、第四ロントンエントチャイナテレグラフ源氏物語とか、第五スヘタテート源氏物語なんてことが書いてありますが、聞いたことがありません。なんとも不思議な源氏物語研究です! どなたかお敎へくださいませ。 

 

いづれにせよ、たつた二一〇〇圓ぽつちで七册の和本。それがまた膨大な研究テーマを提供してくれてゐます。どうしませう。 

 

今日の寫眞・・・今日の収穫の和本。寫眞の右から一、二・・・四。五・・七とつづきます。 

それと、古本祭會場とミニかつ丼