十一月九日(金)乙巳(舊十月二日) 

 

さて、また 『源氏物語』 にもどることにして、〈澪標みをつくし〉を讀みはじめました。第十四帖目です。 

源氏、二十八歳から二十九歳のころのことです。つい最近まで十代後半かと思つてゐたので、ずいぶん苦勞もされたやうです。で、その甲斐があつて、都での復權は順調に進み、自身は内大臣に、義理の兄弟でもある頭中將は權中納言に昇進しました。 

また、源氏を憎む弘徽殿大后を母にもつ朱雀帝は位し、源氏と藤壺(現在の入道の宮)の隠し子である春宮が即位して、冷泉帝となりました。

 

ちよいと氣になつたのは、源氏との密會が發覺して、それで源氏が須磨へ逃避せざるを得なかつた、そのお相手である朧月夜が、夫の朱雀帝にあやまつてゐる場面です。朱雀帝も朧月夜(實は朱雀帝の叔母なんですよね!)にたいしてはめろめろで、源氏との過ちを忘れるよと言ひつつ、「なぜあなたに子供が出來ないのだらう。殘念だね。前生の縁の深い人(源氏のこと)とあなたの中には直ぐにまたその悦びをする日もあるだらうと思ふと口惜しい」、などと人のいいことを言つてをるのであります。 

以上、靑表紙本の一二頁あたりまでの内容です。 

 

それとまた、何年も前に一〇〇圓で求めた、小林茂美著 『かな─その成立と変遷─』(岩波新書) も手に取つて開いてみました。が、その途端、購入したときには難しくて放り出したことを思ひ出しました。たしかに、今になつてみると、變體假名についてだいぶ學んできましたが、六年前にはくづし字と古文書と變體假名の區別もつかないやうな混沌とした頭腦でしたから、「かな」の働きについてよく理解できなかつたのだらうと思ひます。こんどはよくわかります。といふか改めて敎へられる思ひです。 

さらにまた、二册で一〇〇圓の棚から求めた、日向一雅著 『源氏物語の世界』(岩波新書) を開いてみました。カバーのソデに記された、本書の「内容紹介」を紹介しておきます。 

 

「源氏物語は恋と愛の物語であり、王権と政治の物語であり、人の生き方と救済を問う物語でもある。千年にわたって読み継がれてきたその魅力の根源を、この物語のもつ多義的かつ多面的な構造に求めながら、冒頭の桐壺巻に仕掛けられた四つの「謎かけ」を手がかりにその世界を読み解いていく。源氏物語は、読者に問いかける物語なのである」