八月廿九日(水)癸巳(舊七月十九日) 曇天のち晴

 

ほそぼそと、まるでスローモーションの畫像を見てゐるやうに讀み繼いでゐる 『源氏物語〈末摘花〉』 ですが、大輔命婦(たゆうのみやうぶ)や女房たちの手助けによつて、やつと深窓の姫君、末摘花のもとに忍び入り、源氏は思ひをとげます。 

ところが、その夜、はたして「實事」があつたのかなかつたのか、暗闇のなかで顔も見定めることなく退出し、お約束の後朝のお手紙も書き忘れるしまつです。だいぶ源氏としては期待はづれであつたやうです。ですから、これが、例の「初夜」(十五日の日記參照)なのかどうかはつきりとしません。

 

しかも、のちのち 「ときどきおはしける」(時々源氏は末摘花のゐる常陸の宮へ通った) とありますから、まつたくその容貌かたちを見てゐないなんてことはないでせうが、それでも、その醜きお顔を拝見してびつくりおつたまげるといふ場面があると聞いてゐますから、それまでは、毎度毎度眞つ暗闇のなかでの逢瀨だつたのでせうか。不思議な逢瀨です! 

靑表紙本、全八六頁のうち五〇頁まで讀みましたから、五分の三ほど讀んだことになります。あと一息、二息です。 

 

昨日、太平書林で、表題に惹かれて求めた、翔田寛著 『逃亡戦犯』 を手にとつてみたら、面白い。つらい内容かなと思ひましたが、むしろサスペンス小説ですね。考へさせられることも多々あります。 

 

昨夜、從弟の雅純君に、太平書林で見かけた運轉臺について、寫眞もつけてメールしたところ、「英国製の路面電車の制御器」でせうといふ返事でした。興味がありさうな知人に知らせてみますといふことで、一件落着となりました。