六月廿九日(金)壬辰(舊五月十六日) 晴、猛暑、梅雨明け

 

昨夜は夜更し。『オールド・ディック』 が面白くて、後半を一氣に讀んでしまひました。こんなに興奮したのは久しぶりです。内容も饒舌が少なく、緊張をはらんでゐて、わくわくどきどき。しかも快いと言ふか、後味のよい終はりかたで次作があるなら讀みたいと思ひました。 

ディックさん、「わたしの年齢ではほとんどの楽しみは代償をともなうが、すすんでその代償を支払うに足る楽しみは少ない」、なんて言つてゐますが、ぼくの場合は、讀書と古本漁りといふ、「代償を支払うに足る」樂しみがあるので、そのためにたとへ命を縮めても悔いはありません。と、言つておきませう。 

 

さてさて、『源氏物語』 ですが、讀み進むためのウオーミングアップとして、今日は復習をしました。まづは、すでに讀んだところですが、大野晋・丸谷才一著 『光る源氏の物語〈上〉』(中公文庫) の 「帚木」「空蝉」「夕顔」 の章を讀みかへしました。

ぼくが二月に中斷したのは、〈帚木〉の「左馬頭の体験談─指喰いの女」の話の途中です。大野晋先生と丸谷才一さんの對談は實に示唆的で面白く、先を讀むのが急かされるやうです。とくに、〈帚木〉の前に、「かかやく日の宮」といふ卷があつたらうことを想定すると、話が俄然ドラマチックになつてより魅力のあるものに變はるとさへおつしやつてゐます。どうしてでせうか。樂しみです。 

 

また、まだ第二作目を觀てゐないと言つたら、妻が借りてきてくれました。『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』 です。途中から、あれ、これはテレビでみたなと思ひましたが、ついつい終はりまで觀てしまひました。三作のうち、この二作目が、原作の 『探偵はひとりぼっち』(ハヤカワ文庫) にいちばん忠實かなと思ひます。 

それに、作者の東直己さん、きつと出たがり屋なんでせうね。最後の病院の場面でちよいと顔を出してました。第三作目にも出てゐましたが、第一作目には出てゐましたかどうか?