二月十六日(金)己卯(舊正月朔日・朔 晴のちくもり

 

今日の讀書・・今日は出かけてきました。心臟には歩くことが一番の藥だと任じてはゐても、ついつい寢轉んでゐるばかりでは長生きはできません。ところが、金曜日にもかかはらず、神田と高圓寺の古書市は今週はお休みで、仕方なく、唯一、柏驛のモディ柏店で行はれてゐる〈柏古本まつり〉に行つてきました。昨年とは會場が異なり、ちよいと探してしまひましたけれど、驛に隣接してゐたのですぐにわかりました。 

けれども、掘出し物はなく、文庫本二册といふ不漁でした。それで、驛北の太平書林さんへ行つたところ、『新古今集断簡』(ノートルダム清心女子大学古典叢書) といふ、「本書の本文は隠岐本系の一本である」といふ影印本をみつけました。定價では二四七〇圓ですが、それが三〇〇圓。また、『全国古本屋地図 98改訂新版』 に目がとまり、もう使へないくらゐ變動のはげしい古書店界の状況ですが、ぼくには記念碑的な意味を持つ資料でもありますので求めました。

 

さらに、北松戸驛で下車し、萬葉書房さんをのぞきました。ここは通路まで足の踏み場がないくらゐ積み上げられた本で埋まり、肝心な平安時代文學あたりが見えないので、いつも店主に指摘するのですが、うんうんと首を振るだけで一向に變化がありません。それでも、今日は、その中から、『古活字版 伊曾保物語』(勉誠社文庫) を掘り出しました。 

 

註・・伊曾保物語【いそほものがたり】 仮名草子。元和年間(161524)刊行。3巻。《イソップ物語》の翻訳であるが、全部で94話。最初の30話はイソップの逸話、のちの64話が動物の寓話である。《イソップ物語》は、1590(天正18)スペインの宣教師バリニャーノによって日本にもたらされ、九州天草で《エソポのハブラス》として日本語訳ローマ字で印刷された。これが、日本における最初の西洋文学の翻訳本である。この元和の書は、それとは異なって古活字版日本字で翻訳されたものである。 

 

北松戸驛で思ひ出し、ついでですから、北千住驛まで足をのばして、月末の 《會津・喜多方散策旅行》 の乘車券と指定券を買ひ求めました。ところが、往路の東武鐵道は複雜で、會津若松驛まで乘車券が買へないといふのです。よく聞いたら、會津若松驛の手前の西若松からはJRで、障害者割引の通しの乘車券は、西若松までだといふのです。しかも、手書きでしか作れないと言はれて、三〇分も待たされてしまひました! こんなのはじめてです。 

歸路は、郡山驛經由の東北本線ですので、こちらはJR窓口ですんなりと買へました。 

そんなこんなで歸宅したら、六七八〇歩。散歩ではなかつたのに、けつこう歩きました。

 

古本めぐりをしたのみならず、今日は、喫茶店をはしごして、〈賢木〉の卷を讀みつづけ、そしてめでたく讀み終へました。昨年十二月六日に讀みはじめた「靑表紙本」、一三四頁ありました。 

さあ、朧月夜の君との逢瀨の現場を、よりによつて、父親の右大臣に踏み込まれてしまひ、源氏の君も言ひ逃れもできません。危機一髪となりました。 

「紫上系」(十七帖)から讀みはじめた 『源氏物語』、第六帖目の〈賢木〉が終はつて、〈花散里〉、〈須磨〉、〈明石〉へと物語は進みます。どのやうな展開になるのか樂しみです。 

 

今日の寫眞・・〈柏古本まつり〉と、買ひ求めた本三册。