十月廿七日(金)丁亥(舊九月八日 曇天のち晴

 

第十一報・・・おはやうございます。 

四日目の朝を迎へました。わけのわからない方のために、ここいらで今回訪ねた天皇についてお勉強しておきたいと思ひます。 

まづは村上天皇。奥さんの一人芳子が 『古今和歌集』 をすべて暗記してゐたことで有名です。 

村上の皇子が冷泉と円融。冷泉は狂気じみた天皇でその皇子の花山も常軌をはづれた天皇で、兼家とその息子道兼らにだまされてすぐ出家してしまひます。狂気じみたと言へば、陽成天皇もさうでしたが、また長生きされてヒンシュクものだつたやうです。 

冷泉のもう一人の皇子が三条天皇で、目がわるかつたこともありましたが、道長におどされるやうにして譲位してしまひます。

 

さて、円融の奥さんが道長の姉の詮子さん。その子が一条天皇です。道長の甥になります。 

その一条の中宮となつたのが道長の兄、道隆の娘の定子さんなんですね。お仕へしたのがご存じ清少納言といふわけであります。ただ、父の道隆が亡くなり、兄たちの不祥事によつ不幸になつてしまひます。しかし、清少納言は 『枕草子』 の中では幸せな美しい定子さんだけを書ききつてゐます。

 

また、道長の娘、彰子さんはまだ幼かつたのですが、定子さんにつづいて一条天皇の中宮になります。お仕へしたのが、紫式部であり、彰子さんに仕へつつ書いたのが 『源氏物語』 であります。 

その彰子さんが後一条と後朱雀を産み、道長は晴れて外祖父となつて「望月」の世を現出させるのであります。 

竜安寺の裏にあつた陵の禎子内親王は、道長の娘である妍子の娘で、後朱雀と結ばれて、後三条を産みます。

 

いつぽう、道長のもう一人の奥さんの明子は、源高明の娘で、道長との間にできた能信が養女とした茂子、この茂子が後三条と結ばれて白河天皇を産むのです。この後三条は摂関家から離れたので、新しい時代を創設していくことになります。その影にゐたのが能信ではなかつたかと言ふ、永井路子さんの 『大鏡』 のお考へに従つて、ぼくもさう思つてゐますが、その手始めが荘園の整理であり、さう、院政が白河天皇によつてなされると、かういふことになつてをります。

 

以上、今回の探訪で訪れることができた天皇ばかりでした。白河天皇陵も帰路訪ねられるかも知れません。まあ、めでたしめでたしとしておきませう!

 

 

第十二報・・・このたびはたいへんお邪魔さまでした。この報告を最後にいたします。 

今朝、橿原神宮前を発ち、天理参考館には開館と同時に入館しました。各階で様々な展示がなされてゐましたが、ぼくは三階に直行して「古典の至宝展」のみを、一時間半ばかりかけて、じつくりながめ、また読めるものには目を通してみました。  

 

この 「古典の至宝展」 は、実は、いつもおぢやましてゐる神保町の八木書店で、パンフレットを見て知つたのでした。八木書店が出してゐる「天理図書館善本叢書」に次いで、「新・天理図書館善本叢書」刊行記念として開催されたものなんですね。それで、この機会にぜひとも天理に行きたいと思つたのがこの春のことだつたでせうか。貴重な本を保存・公開してくれるなんて、素人にとつてはありがたい、またとないチャンスですから、それでやつてきたわけであります。

 

まあ、京都国立博物館にくらべたらがらすきで、といふより誰もをらず、国宝の播磨国風土記やら古語拾遺やら明月記、それに源氏物語の池田本に集中できました。 

奈良絵本の詞書は、お伽草子と同様やさしかつたですが、芭蕉と西鶴の自画自賛はむつかしくて歯がたちませんでした。 

以上、心おきなく見ましたので、すぐに天理駅にもどり、次なる目標、宇治を目指しました。

 

宇治平等院にははじめてやつて来ました。なんだか朱色に塗り上げちやつて、あんまり興味はわきませんでした。むしろ当時、そんな富と権力にあかせた寺院と仏教に反旗を翻して、貧しく虐げられてゐた人々の中に入つて布教した聖(ひじり)たちの働きに共感を覚えますね!

 

それで参道で、これまた大きなわらび餅を食べ、漲り流れゆく宇治川を渡り、「源氏物語ミュージアム」を訪ねました。まあ、展示や映画を見させていただきましたが、恥ずかしくて、身の置き所ないといつた気持ちでした! でも大人ですからね、にこやかに帰つてきました。やはり、原文を読みながら、想像をたくましくしてゐたはうが、源氏をよく理解できると思ひました。 

 

添付寫眞・・ホテルから見た橿原神宮前駅。左が京都方面、右が大阪方面と吉野方面ホーム。とにかく便利な駅です。宇治平等院。宇治橋たもとの夢浮橋之古蹟。「源氏物語ミュージアム」入口。

 



 

さて、京阪の宇治駅から乗るのははじめて、また丹波橋駅で近鉄に乗り換へ、竹田駅下車。ここでは、単なる公園と化した鳥羽離宮跡、白河天皇陵と鳥羽天皇陵と近衛天皇陵、それに、鳥羽伏見の戦ひ跡碑を見学し、すべての予定といふか計画が果たせました。

 

今、京都駅で一息ついて新幹線を待つてゐるところです。無事に帰宅できさうです。ではこれにて失礼つかまつります。 

今日の歩数は、一一〇〇〇歩でした。どなたさまもお元気で。 

 

添付寫眞・・白河天皇陵。近衛天皇陵。鳥羽天皇陵。「鳥羽伏見の戦い 勃発の地」碑。