七月三日(月)辛卯(舊閏五月十日 曇りのち晴

 

今日の讀書・・暑くなつてきました。エアコンを除濕にして橫になり、モモタとココを相手にしながら、昨日讀みはじめたお伽草子の 「横笛草紙」(註) を讀み終はらしました。分量は四十九頁。大きな文字ですし、一氣讀みでした。 

書かれた時代は室町時代ですが、『源氏物語』 にくらべると、言葉や語句にほとんどつかへることなく讀むことができます。かうなれば、いくら影印だつて恐れてはゐられません。

 

むかし、ワイルダーの 『大草原の小さな家』 シリーズを原語で讀んだことがありますが、やさしい文章でした。それにくらべれば、讀みやすいと言つても、「横笛草紙」 のはうがかなりむづかしいかも知れません。古典は語學ですね。横文字は苦手ですし、もう手を引きましたから、せめて日本語(縱文字)を讀めるやうになりたいです。

 

さう、「横笛草紙」 のことですが、内容的にいへば、瀧口はなぜ横笛を自殺に追ひ込んでしまつたのか。父親に反對されたとしても、勘當されたのですから、それこそ堂々と結ばれてしまへばいいものを、何かに縛られてゐるそんな生き方を感じます。それが儒教なのか斷言できませんが、まあ、それを感動をもつて鑑賞した人々がゐたといふことが、これまた日本人の心性を映し出してゐるともいへるのでせう。 

 

註・・「横笛草紙(よこぶえぞうし)」 お伽草子。作者未詳。室町時代の成立。平重盛に仕える斎藤滝口は建礼門院の侍女横笛を見初(みそ)め、やがて深い恋仲となったが、滝口の父は二人の結婚を許さない。世をはかなんだ滝口は嵯峨の往生院に遁世し、尋ねてきた横笛にもふたたび会おうとしなかった。横笛は絶望のあまり大堰(おおい)川に投身して果て、滝口は因果の身を悲しんで高野山へ上り仏道修行に専念した。『平家物語』で知られる話と同材で、中世に数多い悲恋遁世談のなかでも、とくに哀れな物語として長く人口に膾炙した。 

 

今日の寫眞・・「横笛草紙」の一場面。插繪は、瀧口が横笛に手紙を渡す場面。