五月十一日(木)戊戌(舊四月十六日・望 晴

 

今日の讀書・・學習院さくらアカデミー、《源氏物語をよむ》 第二回講義が近づいてきました。『源氏物語』〈桐壷〉の卷を讀んでゆくだけの講義のやうで、だいぶ期待はづれなんですが、まあ、自分で勉強しなければ身にはつかないといふことなんでせう。 

それで、先生ご指定のテキストはさておいて、ぼく自身は、人生最後で最大の目標を、くづし字(複製・影印)で日本古典文學を讀むことにおいてゐますから、『宮内庁書陵部藏 靑表紙本 源氏物語』 を讀んでいきたいと思つてゐます。 

すでに、〈桐壷〉の卷を讀み終はつてゐるので、先に進みたいのではありますが、せつかくの勉強の機會ですから、この講義のあひだは〈桐壷〉の卷にこだわつてみたいと思ひます。 

それで、探し出したのが、藤井貞和著『古典講読シリーズ 源氏物語』(岩波セミナーブックス) でありまして、これは、「桐壷の卷だけを扱っている『源氏物語』の講座の記録です。」といふ本ですからね、だいぶ勉強になります。まあ、その他手にして讀む本讀む本、その著者の視點が異なるので、とまどひもありますが、また多角的に讀みこんでいくことができるので、それこそ勉強になります。 

 

それはそれとして、讀みはじめた、反町茂雄さんの 『天理圖書館の善本稀書』(八木書店) がすごい。ぼくもすでに二十數册手に入れた、「天理圖書館善本叢書」(すべて影印資料) といふ、ぼくのお寶本でもありますが、これらは、天理圖書館に納まつてゐる「善本」を出版したものであります(昨日と今日の寫眞參照)。 

そして、どのやうにして、全國の「善本稀書」が天理に納まるやうになつたか、それに携はつたのが、何を隠そう、反町茂雄さんだつたのでありますね。序に曰はく、

 

「天理図書館の大蒐書は、天理敎眞柱中山正善氏の畢生の努力の結晶であります。その名声は、日本の学界・図書館界にあまねく知られて居るだけでなく、今日では世界的に著聞して居ります。総数百万を超える大きな数字は、一代のコレクションとしては稀有の大数でありますが、特に蒐集の質の優秀さ・貴書・珍籍の甚だ豊富な点で、国内に於いては既に無比。筆者は、幸いに青年時代から中山眞柱の眷顧を得て、その四十年に近い蒐書事業に終始関連を持ちつづけました。」

 

さう、その「蒐書事業」の記録が、本書の内容なんです。といふよりも、出版された、「善本叢書」の月報に記されたものですから、まさしく、ぼくらの手にどのやうにして届くことができたかのドキュメントですね。讀みながら感動です。 

いはば門外不出の 「善本稀書」 が、いつどのやうにして流出したのか、そこらあたりは、これは商賣であり、人間的驅け引きなんでせう。ぼくにはうかがひえない世界ですけれど、ただ言へることは、門外にでなければ、無かつたも同然で、貴重な歴史的財産が埋もれたままになつてゐたといふことです。だから、コレクションなんてお遊びでせうなんて、はじめはぼくも思つてゐましたが、いやいや、コレクションされたからこそ、だれもが見たり樂しんだり、享受できるのでありますね。これは心から感謝しなければなりません。 

 

今日の寫眞・・天理圖書館善本叢書 『日本後記』 (八木書店)。「六國史」を讀んでゐたときに、他は吉川弘文館の國史大系で讀んだのですが、そのころ、神保町の東陽堂で二千圓(定價は九八〇〇圓)で手に入れることができたので、これだけは、この複製で讀みました。 

開いた頁は、嵯峨天皇が即位し、藥子の亂の概略が記されてゐる箇所です。ちやうど、ぼくの六十四歳の誕生日の日に讀んでゐますね! 

それと、甘えん坊のモモタ君。