十一月七日(月)癸巳(舊十月八日 晴

 

今日の讀書・・今日は、西宮から仕事で出てきた神田君と、神保町三省堂前で待ち合はせ、その地下の放心亭で晝食をともにしました。彼は、今月で結婚四十年を迎へ、關學のチャペルでの擧式が懐かしく思ひ出されます。 

まあ、彼とはいつもとりとめもない思ひ出話と、互ひの知り合ひの消息を語り合ふだけですが、さういへば、最近は、學生時代の友人たちとの交流はほとんどせず、むしろ日光街道と中仙道を一緒に歩いた旅友とつき合ふことのはうが多くなりました。それも、旅友は、みなさんどんな方なのか、その職業も經歴などもまつたく知らないし話題にしないところが面白い。今この時のつきあひを大事にしてゐる、さういふ仲なんですね。 

今月末には、東京の紅葉を訪ねて、また舊交を温め、樂しみむために出かけます。 

 

神田君と別れてからは、また古本屋めぐりでした。古本まつりが終り、静けさを取り戻した街路もいいものです。落ち着いて見て歩くことができます。 

小宮山書店では、近ごろ上階まで訪ねることはなかつたのですが、なんと、天理圖書館善本叢書が三冊一千圓で賣り出されてゐたんです。ドキリとしました。一册だつて千圓以下といふことのなかつた本ですから、きつと眼の色が變はつてゐたかも知れません。どうにか六冊にしぼつて買ひそろへ、その場で送つてもらひました。

 

面白いもので、あるときまではたいへん高價だつた本(或いはシリーズ)が、突然、それも他の店でも一齊に價格が下がることがあります。新しい版が出た場合もあるでせうし、需要がなくなつたからといふこともあるのでせう。今氣になつてゐるのは、岩波文庫の『玉葉和歌集』です。ほとんど見かけることはないのですが、ただ、岩波の古書専門店だけで見ました。それが、二五〇〇圓もするのです。法外ですよね! もちろん買ひませんでした。

 

また、歸り際には、外れの西秋書店をのぞきました。そこで、珍しい和本を見つけ、それも二〇〇圓といふ安さなので、その本を話題にして、ご主人とひとときお喋りを交はしました。最近は、影印本といふか、くづし字の本はほとんど賣れないとこぼしてをりました。國文學の學生や先生すら見向きもしないやうなのでありますね。

 

先日、くづし字リテラシー復活を願ふ中野三敏先生が褒章をいただきました。アベが竝んで寫眞におさまつてゐるのは許しがたいことですが、先生の學問が世に評價されたことは嬉しいことだと思ひます。でも、アベが同席するなら、寫眞はもちろん褒章も受けん! と居直つてほしかつたです。はい。 

 

今日の寫眞・・神田君と放心亭にて。西秋書店にて求めた、二〇〇圓の和本。と言つても端本です。が、それにしても安い。