九月卅日(木)丁未(舊八月廿二日 曇天

 

今日の讀書・・昨夜は寢る前に、黒川博行著 『悪果』(角川文庫) を讀み終へ、つづいて續編の 『繚乱』(同)を讀みはじめました。久しぶりにからだのあちこちからアドレナリンが染み出してきましたね。 

「黒川作品の魅力と言えば、上方漫才さながらの軽妙な大阪弁の掛合いがまず挙がる」、と言はれるくらゐで、物語の展開はもちろんですが、「軽妙な大阪弁の掛合い」の場面だけを讀んでも面白い。 

例へば、以下は賭博の現場に踏み込む捜査員のやりとりです。 

 

一時三十五分、K組の応援捜査員から連絡が入った。グレープ(賭博現場)の出入口付近に見張りはいないという。佐伯以下、十七人の捜査員は行動を開始した。歩いてグレープに向かう。 

「なんかしらん、膝がギクシャクしますわ」 

川崎が話しかけてきた。「こんなに緊張したんは、警察学校の射撃訓練以来です」 

「拳銃を撃ったんはそのときが初めてか」

近ごろは済州島やフィリピンまで飛んで銃を撃つマニアがいる。 

「あれ、なかなか当たらんもんですね」 

「成績はどうやった」 

「からっきしでした。三十六人中の三十三番でしたかね」 

「ひどいな。ほとんど標的(まと)を外したんやろ」 

「自分は近視と乱視ですねん」 

「眼鏡、かけんのか」 

「コンタクトです」 

川崎は堀内の前にまわって眼をしばたたいた。この男はやはり変わっている。同志社大学を出たというから、IQは人並みにあるはずだが。 

「文学部でなにを専攻したんや」 

「塙保己一です」 

「なんや、それ」 

「『群書類從』です」 

「あ、そう・・・・・」 

ガサ入れの前にわけの分からないことを訊いてしまった。 

 

今日の寫眞・・今日のココ。

 


 

 

*九月の讀書記録

九月六   夢枕獏著 『陰陽師 醍醐ノ卷』 (文藝春秋)

九月七   高麗浪漫学会編『改訂版 高麗郡歴史ミニガイド』

九月九   風野真知雄著 『初秋の劍 大江戸定年組』 (二見時代小説文庫)

九月十一日 堤和博著 『和歌を力に生きる─道綱母と蜻蛉日記』 (新典社新書)

九月十五日 夢枕獏獏著 『陰陽師 酔月ノ巻』 (文春文庫)

九月十八日 宮内庁書陵部藏 『桂宮本 蜻蛉日記 上』 (笠間書院)

九月十九日 夢枕獏獏著 『陰陽師 螢火ノ巻』 (文藝春秋)

九月十九日 夢枕獏著・村上豐繪 『陰陽師 鼻の上人』 (文藝春秋)

九月廿一日 夢穂村弘著 『鳥肌が』 (PHP研究所)

九月廿一日 夢穂村弘著 『本当はちがうんだ日記』 (集英社文庫)

九月廿三日 風野真知雄著 『菩薩の船 大江戸定年組2』 (二見時代小説文庫)

九月廿三日 風野真知雄著 『耳袋秘帖 妖談うしろ猫』 (文春文庫)

九月廿六日 夢枕獏獏著 『陰陽師 蒼ノ巻』 (文春文庫)

九月廿八日 風野真知雄著 『起死の矢 大江戸定年組3』 (二見時代小説文庫)

九月廿九日 黒川博行著 『悪果』 (角川文庫) 

 

*參考・・夢枕獏著 〈陰陽師シリーズ〉 

1 陰陽師                 9 陰陽師 瀧夜叉姫(下) 

2 陰陽師 飛天ノ巻          10 陰陽師 夜光杯ノ巻 

3 陰陽師 付喪神ノ巻          11 陰陽師 天鼓ノ巻 

4 陰陽師 生成り姫           12 陰陽師 醍醐ノ巻 

5 陰陽師 鳳凰ノ巻          13 陰陽師 酔月ノ巻 

6 陰陽師 龍笛ノ巻          14 陰陽師 蒼猴ノ巻 

7 陰陽師 太極ノ巻          15 陰陽師 螢火ノ巻 

8 陰陽師 瀧夜叉姫(上)