六月七日(火)庚申(舊五月三日 曇天一時小雨

 

今日の讀書・・今日は、母が老人會で堀切菖蒲園に行き、午後は童謠の會につづけて出かけるといふので、ぼくは妻とまた日本橋に出かけました。先日たのんだ眼鏡を受け取りに行つたのでありました。まあ、結婚して四十三年の記念にといふとかつこいいのですが、淺草に行つた時に目にとまつた鼈甲ぶちの眼鏡が、まるでぼくのために作られたかのやうにぴつたりと似合つたので求めたのであります。それで、レンズだけ、日本橋のお店で檢眼していただいたといふわけなのです。 

遠くを見てもぼやけるし、近くはなほさらぼやけて文字も讀めません。それで、普通に回りが見えるやうな度にしていただき、その下部に文字が讀める度の部分をつけてもらひました。歸路、かけてきましたが、今までのよりもずつと見やすくなりました。むろん、讀書専用のはありますので、鼈甲ぶちはお出かけ用といふかふだん使ひですね。 

それで、持參した本も、讀み進むことができました。きょうは、『今昔物語集(本朝世俗部)』(角川文庫)を持つて家を出、その中の、陰陽師關係の話を讀みました。陰陽師を題材にした、夢枕獏さんの『陰陽師』をはじめとする小説の題材を提供してゐる、そのもとの話ですから、まづもつて讀んでおかなければならなかつた本なのであります。 

それによると、當然のことなのですが、陰陽師といつても、安倍晴明だけでなく、それ以前から多くゐたのであります。滋岳の川人とか、弓削是雄とか、それに、安倍晴明の師匠であつた加茂忠行などです。いや、むしろ、これらの話のはうが、想像の餘地が殘されてゐて、小説化された話よりもかへつて面白いともいへます。

 

晝食をすませてからは、また別行動です。ぼくは、大手町驛まで歩いて、半藏門線で神保町に出ました。あまり時間がないので、國語國文學關係の西秋書店と日本書房だけを訪ねました。時々小雨が降つてくるので、本屋さんとしては最惡の日のやうであります。が、その兩店で、掘り出し物がありました。 

影印本としては、『玉造小町壮衰書』と『東海道名所記』、それに、薄つぺらですが、和本の『おもひ川』(これは、「文學世界」シリーズの第十で、明治廿五年の出版です)。『新選 葉書春秋帖』は昭和十八年一月の發行で、「謹賀新禧 戰勝の春を壽き奉り 尊家の御淸福を祝し上げます 一月一日」(寫眞參照)からはじまる、葉書文例集なのでありますが、實に當時の世相をあらはしてゐます。ぼくたちも、「戰勝の春」を祈るやうになるのでせうか?  

 

今日の《平和の俳句》・・「陽(ひ)だまりに猫とぼうやとばあちゃんと」(六十七歳女) 

〈中江有里〉 さまざまな命が同じ場所にのんびりと並ぶ光景。しみじみと平和を感じます。ぼうやが年を重ねて、この光景が繰り返されますように。 

 

今日の寫眞・・まづは、今朝の新聞の切り抜き。それと、東京驛大丸のトイレから見た東京驛と丸の内方面。そして、今日求めた本と、讀み終はつた『篁物語』。