五月四日(水)丙戌(舊三月廿八日 昨夜雨風吹き荒れ、日中晴れて暑い

 

中仙道の旅も終へ、歴史に出會ふための散歩もせいぜい月に一度くらゐにしたので、このへんで、また原點に歸つて勉強しようと思ひ、その計畫をたてるために、ドナルド・キーンさんの、『日本文学史 古代・中世篇二』(中公文庫)の「九・平安時代の日記文学」と、『同 古代・中世篇三』の「一一・物語の始まり」の部分を讀みました。 

これからこれらに含まれる作品を讀んでいくので、概観ををとらへておきたかつたからですが、たいへんよくわかり、ますます早く讀んでみたいと思ひました。かう言つてはなんですが、日本人の學者が書いたものより數段わかりやすいです。日本人學者の概説は個々の作品にのめり込みすぎて、概観を理解するにはむいてゐません。 

だけれども、ドナルド・キーンさんはすごい方ですね。學者だから當然ではあるんでせうが、日本人のぼくらだつて讀んでゐないやうな古典文學をほんとうによく讀んでゐます。でなければ決して書けない内容です。キーンさんの『百代の過客 日記にみる日本人』はぼくの愛讀書でが、一つ疑問なのは、著書を英語で書いてゐる點です。讀んでゐるのは、當然日本語の原文だと思ふのですが、それともすでに英譯された作品を讀んでゐるのでせうか。 

 

ところで、ここでぼくの歴史と文學の勉強方法を確認しておきたいと思ひます。主要な點は、歴代天皇ごとに時代を區切つて、その周邊を學びながら次の天皇の時代へと順次くだつていく學び方です。「六國史」を讀み通しましたので、以後は『史料綜覽』と『日本紀略』(さらに『帝王編年記』・『百錬抄』・『續史愚抄』・『後鏡』・『德川實記』、光圀さんの『大日本史』など、重なる場合には竝行して讀みつづける計畫)を縦軸(時間軸)に、必要な時には、『大日本史料』 にもお出まし願ひつつ、歴史的できごとを把握しながら、横軸(空間軸)としてその時代の文學作品を讀みつつ、我が國の歴史の網の目を埋めていくといふ仕方です。 

現在は、醍醐天皇の時代の途中で、時間軸としての『日本紀略』と『史料綜覽』のその部分は讀んだので、空間軸としての作品を讀み進んでゐるところです。二年間の空白がありましたが、その穴を埋めるべく、まづ、時間軸と空間軸の兩方にまたがる、藤原忠平の日記『貞信公記』を鋭意繼讀中です。 

それとともに、文學の、『伊勢物語』と『土左日記』を讀み、また『古今和歌集』と『大和物語』を繼讀中です。それで、『古今和歌集』はまだかかるとして、早く『大和物語』を濟まして次にかかりたいのであります。それで、キーンさんの概説を參考にしたのですが、これから讀むべき本とその順序がほぼ明らかになつてきました。當面は西暦一〇〇〇年頃の一條天皇の時代まで、つまり、醍醐天皇につづく、朱雀、村上、冷泉、圓融、花山、そして一條までですが、天皇にも癖があつて、その時代を概観するだけでも面白さうですし、それとの關連で讀む文学作品も時代の中に位置づけて讀むとそれはまた味はいが增します。 

作品でいへば、『源氏物語』や『榮花物語』あたりまでが當面の目標といへるでせうか。

 

醍醐から一條までのその約百年間の作品について、キーンさんをはじめ、どの概説書もだいたい次のやうに分類してゐます。 

「和歌・漢詩文」(古今和歌集・後撰和歌集・和漢朗詠集)、 

「作り物語」(竹取物語・宇津保物語・落窪物語・源氏物語)、 

「歌物語」(伊勢物語・大和物語・平中物語・篁物語)、 

「日記文学」(入唐求法巡禮行記・土左日記・蜻蛉日記・多武峰少將物語・和泉式部日記・紫式部日記・更級日記・成尋阿闍梨母集・讃岐典侍日記)、 

「漢文の日記」(貞信公記・九暦・權記・御堂關白記・小右記)、 

「随筆文學」(枕草子)、 

「歴史物語」(榮花物語)

 

すでに讀んだものもありますが、ぼくはこれからも、だいたい書かれた年代順に讀んで行きたいと思つてゐます。もちろん讀むのは複製・影印本によつてですが、まだ入手してゐないのもいくつかあります。 

今日は、それで、『大和物語』 を讀みつづけました。歌物語ですから、まあ、そんなに面白いものではありませんが、早急に判斷をくださないやうに、聞き耳をたてるやうな讀み方がふさはしいと思つてゐます。それに、この本に限つてですが、くづし字がほぼすらすら讀めるやうになりまして、讀み進む速度もあがつてきました。 

でも、かうやつて計畫を見渡すと、だいぶ壯大すぎて、無謀のやうにも思へますが、まあ、命絶えるまで、どこまでやれるかためしてみるのも、決して無駄な人生ではないと思ふのであります。はい。 

 

今日のピクニック・・夜、八時半に家を出、綾瀨驛までの往復を妻と語りながら歩きました。どうしても早足になつてしまふので、これからのことを考へて、意識的にゆつくりと歩き通しました。歸宅したのは一〇時でした。 

 

今日の《平和の俳句》・・「白飯(しらいひ)に蕗味噌匂ふ平和かな」【評】山里の匂ひ、平和の味。 

 

今日の讀書・・ドナルド・キーン著、『日本文学史 古代・中世篇二』(中公文庫)の「九平安時代の日記文学」と、『同三』の「一一物語の始まり」の部分を讀みました。 それと、『大和物語』を繼讀。

 

今日の寫眞・・今日の新聞切り抜きと、夜のピクニック。小菅神社への入口とはじめて出會つた平野神社。

 


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