三月廿日(日)辛丑(舊二月十二日・春分の日 晴

 

あさのあつこ著『弥勒の月』(光文社文庫)、妻に薦められて讀みはじめましたが、もう我慢も限界、いくら妻や故児玉清さんが絶讃してゐるものでも、ぼくにはまつたくなじめませんでした。物語ではありませんね、これは。それで、途中で放棄しました。

岡つ引きの伊佐治の語りで話は進んでいきますが、同心の男がどうしようもない、そこが魅力らしいのですが、その同心と犯人と思しき男とのやりとりが延々とつづくのですが、それが、まあ、お互ひに、相手の心の奥に土足で踏み込むやうな言葉のやりとりで、ぼくには耐えられませんでした。 

だから、地圖をひろげて、場所や情景を想像しながら讀む樂しみがありませんでした。せいぜい、竪川にかかる二ツ目橋が登場するくらゐ、時代劇は、江戸の町の情景を彷彿とさせてくれなきやねええ。 

 

今日の讀書・・あさのあつこ著『弥勒の月』(光文社文庫)を途中で放棄し、池波正太郎の『江戸切繪圖散歩』(新潮文庫)を讀みはじめました。先日讀んだ、池田弥三郎著『東京の中の江戸』もさうでしたが、實際に東京に生まれ育つた人や、東京で生活した作家らの回顧談が面白さうです。 

例へば、永井荷風の『日和下駄』その他をはじめとして、田山花袋『東京の三十年』、木村荘八『東京繁昌記』、佐多稻子『私の東京地圖』とか、田村隆一『ぼくの東京』、野口冨士男『私のなかの東京』、水上勉『私版東京圖繪』、植草甚一『ぼくの東京案内』、杉本苑子『東京の中の江戸名所圖繪』、川添登『東京の原風景』、さらに、種村季弘さんの『江戸東京《奇想》徘徊記』、坂崎重盛『東京文藝散歩』と『東京煮込み横町評判記』、川本三郎『私の東京歩き』その他多數、鈴木博之『東京の地霊』、それに滝田ゆうの『寺島町奇譚』その他多數と、杉浦日向子さんと、森まゆみさんなどなど。 赤瀨川原平『東京路上探検記』と林丈二『路上探偵事務所』も加へておきませう。

いや、矢田插雲の『江戸から東京へ』(全九卷)と三遊亭圓生の『江戸散歩』(上下)と、樋口淸之『史実 江戸』(全五卷)を忘れてはなりませんね。いやあ、たくさんあります。まあ、つまらないものは早めに放棄することにして、我が《散歩をすれば歴史に出會ふ獨り散策》のために、讀めるだけ讀んでいきたいと思ひます。 

 

今日の寫眞・・東京新聞切り抜きと、今日疋田さんから贈つていただいた、「東京名物 都電もなか」。それと、載せ忘れた、柳橋から見た、神田川が隅田川へ流れ込む合流地點。正面は兩國橋です。

 



コメント: 0