十一月廿日(金)庚子(舊十月九日 小雨のちやむ

 

岩崎武夫著『さんせう太夫考 中世の説経語り』(平凡社選書)の、「説経序説」と「第一章『さんせう太夫』の構造」讀みました。

う~む、難しい。まあ、たしかに讀んでゐて、森鴎外が口觸りの良い物語に仕立て直したといふことは分かりました。それでも、當時の残酷な社會を寫しとつてはゐたわけで、ぼくがかすかに思ひ出すのは、映畫となつた、白黒映畫の田中絹代演じる母親が筵ばたで雀を追ひ拂ひながら、「安壽戀しや、ほうやれほ。厨子王戀しや、ほうやれほ。」とつぶやくやうに歌つてゐる姿ですね(註)。それでも刺激が強かつたわけで、人買ひとか人攫ひの存在を大變恐ろしく思つたこともたしかなことであります。

それでも、本書では、安壽の拷問場面やさんせう太夫が處刑される場面など、「説經」では聴かせ所として赤裸々に描寫されてゐる残酷な場面はほとんど切り捨てられてゐるさうです。その原文をつづいて讀んでいきたいと思ひます。

(註)・・森鴎外の『山椒太夫』の映畫化は、一九五四年三月三十一日公開といひますから、ぼくがまだ七歳の時です。製作は大映で、監督は溝口健二。出演者は、田中絹代·花柳喜章·香川京子·進藤英太郎·河野秋武·浪花千栄子といつた面々でした。惡役が似合ふ進藤英ちやんに河野秋武なんて、懐かしいですね。

なほ、この作品は、『西鶴一代女』、『雨月物語』に次いで三年連續でヴェネツィア國際映畫祭に入賞し、海外でも高く評價され、溝口健二監督の代表作のひとつとなつたさうです。

それに、この映畫、ユーチューブで觀ることが出來るんですね。原作と鴎外作品につづいて觀てみたいと思ひます。

 

今日の讀書・・岩崎武夫著『さんせう太夫考 中世の説経語り』(平凡社選書)の序説と第一章讀了。つづいて、新潮日本古典集成の『説経集』の中から、「さんせう太夫」を讀みはじめました。

 

今日の寫眞・・昨夜の抗議行動でいただいたチラシの數々と朝刊の切り抜き。それと、『山椒太夫』の映畫から。

 



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