七月十八日(土)乙未(舊六月三日 曇天のち小雨

 

メガロスに行くなら歩いてストレッチをしようと、結局、神田古書會館と神保町へ出かけてしまひました。今日の掘り出し物は、三點。一つは新潮日本古典集成の『太平記』全五卷。これがなんとまとめて一千圓。二つ目は、古文書風の、『吉永遺訓』、つまり、法然上人の 「一枚起請文」 です。もちろんくづし字です。漢字のいくつかにつまづきましたが、ほぼ讀めました。うれしいですね(學びたい人のために、その翻刻文と寫眞を載せました)。三冊目は、井上ひさしの 『わが友フロイス』(ネスコ) です。これには著者の「謹呈」札がはさまつてゐましたから、どなたかがいただいたのに處分してしまつたのでせう。不遜なやつですね。

 

一枚起請文

もろこし吾朝に もろもろの智者達の沙

汰しまうさるる観念の念にもあらす

また学問をして 念の心を悟りてまうす念

佛にもあらす ただ往生極楽の為にはなむあ

みた佛とまうして うたかひなく往生するぞ

とおもひとりてまうすほかには 別の子細

さふらはす たたし三心四修とまうす事の

さふらふは 皆決定して南無阿弥陀佛にて

往生するそとおもふうち二こもり候なり 此

外におく深き事を存せは 二尊の憐にはつ

れ 本願にもれさふらふへし 念佛を信せん

人ハたとひ一代の法を能ゝ学すとも 一文不

知の愚鈍の身になして 尼入道の無智の輩に

同して 智者のふるまいをせすしてたゝ一向

に念佛すへし

    爲證以両手印

  浄土宗ノ安心起行此一紙ニ至極セリ 源空

か所存此外に全ク別義ヲ存せす 滅後ノ邪

義を防かんか爲に所存を記し畢。

建暦二年正月二十三日   源空    御判

 

おまけ・・「この『一枚起請文』というわずか十数行の文は、法然上人が亡くなる二日前に、 上人の身の回りの世話をしていた弟子の一人である勢観房源智の求めに応じて書かれたものであり、浄土宗の教えの本質は何であるのか、 つまり念仏の教えの肝要を示され、仏に誓いをたてられた(起請)文です。また、上人亡き後の浄土宗教団はどうしていけばよいのか、 などが盛り込まれています。

 当寺の法要中はもとより、僧俗共々に広く称えられている文となっています。なかでも特に大切な部分は 『智者のふるまいをせずしてただ一向に念仏すべし』という一節であり、浄土宗一宗の教えがここにすべて集約されています。『念仏を称えれば必ず救摂する』という阿弥陀仏の言葉を信じ、あれこれ言わず、 能書きも付けないでただただ念仏を称えなさい、ということが浄土宗の本質、もしくは根源と言えるところなのです。

 法然上人ご真筆の原本は浄土宗大本山黒谷金戒光明寺に伝えられています。」

 

今日の寫眞・・神保町に最近できた「中華王記厨房」。ここの五目かたやきそばがすごく美味しい。少し、お酢を入れるのが秘訣です。二枚目は、『吉永遺訓』と、井上ひさし著『わが友フロイス』(ネスコ)。そして、『一枚起請文』の全文です。 

 


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