二月四日(水)辛亥(舊十二月十六日・望・立春 晴

今日は定例の通院日。慈惠醫大病院の心臟外科に一二時の豫約でした。ところが、どういふわけでせうか、來週の水曜日が休日だからだといふ説明をお聞きしましたが、普段にない混みやうで、診察を受けたのが、一時五〇分でした。それから、一時豫約のもうひとつの科に行つたので、皮肉でもなんでもなく、持參した本が充分に讀めました。

それに輪をかけて時間がかかつたのが藥局でした。一時間半も待つといふのです。もう、その間、といふか、藥局が閉まるまでの間、神保町に行つてしまひました。でも、水道橋驛まで乘り、訪ねたのは日本書房と西秋書店、それに友愛書房だけといふ、ぼくにしては實に禁欲的な午後のひとときでした。

西秋書店では『古本説話集』の影印本を發見! 友愛書房では二册、『歴史紀行(四十一)』のために探しました。ここは、キリスト教書専門の古本屋さんですから、キリシタン關係の本だけでも山のやうにありました!

 

今日の讀書・・きのうネット注文で屆いた、丸谷才一著『思考のレッスン』(文春文庫)が面白くて、病院でたつぷり讀むことができました。この本によると、丸谷才一さんは、ぼくの祖父と同じ山形縣鶴岡市のご出身なんです。まあ、それで親近感があるからといふわけではありませんが、ぼくは好きですね。かういふことを言つてゐるんです。

「あの十代の十年間、僕には不思議で不思議でたまらないことがいっぱいありました。中でも、二つのことがどうしてもわからなかつた。

その一つは、なぜ日本はこういう愚劣な戦争・・・つまり日中戦争をはじめてしまったのか、どう見たって先行き見込みないのに、なぜそれをずるずる続けて行くのか、ということでした。

まさかその上、アメリカと戦争するなんて、これ以上バカなことをするはずはない、絶対にやらないと思ってましたよ。しかし、なんだかしそうな気配が次第に濃くくなってくる。どうしてこんなことになって行くのか。それが不思議でたまらなかったんですね」。

この文の、「日中戦争」と「アメリカと戦争」のところを、「イスラム國との戰爭」といふ言葉に變へてみたら、まつたく同じことが言へると思ひませんか? 理由がどうであれ、いつの時代にも戰爭がやりたくてやりたくてたまらない連中がゐるんですね。そのことをしつかりと踏まへたうへで、代議士(國會議員)を選ばないと、ただ地元の人でお世話になるからなどと、安易な選擇をしてゐるなら、これからだつて、戰爭好き人間とそれと結託した武器製造産業である死の商人とに、我が國は目茶目茶にされてしまふでありませう! 彼等にとつて、國民なんてどうでもいい存在なんです。これは、決して杞憂ではないと思ひます。

 

今日の寫眞・・御成門交差點から見た夕暮れの東京タワー。丸谷才一著『思考のレッスン』(文春文庫)。それと、久しぶりに訪ねた神田の友愛書房で求めた二册。先日の「中仙道を歩く」で、キリシタン遺物の實物を見てしまひましたからね、多少とも復習を、いや勉強しておきたいと思つたしだいです。ヨハネス・ラウレス著『きりしたん史入門』(エンデルレ書店)は、ぼくが生まれた年の出版です。



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