二月廿四日(水)己巳(舊十一月三日) 晴れ
『歴史紀行三十九 中仙道を歩く(廿二)』を書きはじめました。途中出會つた良寬さんの歌碑について書いてゐたら、思はずぼくの氣持ちを暴露してしまひました。暴露といふほどのことではないんですが、惡事ではないにしろ、人によつてはいやがるかも知れないと思つたからです。ですが、自分の正直を書き續けたいので、これを省くわけにはいかなかつたんです。お許しを願ふしかありません。
夕食後、久しぶりに妻と、“夜のピクニック”に行きました。お花茶屋驛前商店街までの短い散歩でしたが、二六九〇歩あるきました。
また、いつもの古本屋で、島崎藤村の『春を待ちつつ』(岩波文庫)と穎原退藏著『俳句評釋(上下)』(角川文庫)を求めました。藤村のは、一茶と芭蕉について觸れてゐたからです。なんといつても、角川文庫の古いといふか以前の黄色帶本がいいのです。表紙はもちろん、本文の用紙も味はいがあるのです。手にしてもしなやかで、しかも毛羽立たず、いつも手にくるんで持ち歩きたくなります。現在の桃色がかつた表紙本はつまりません。
岩波文庫も、ぼくの『良寬詩集』は昭和十二年第七刷發行ですが、『春を待ちつつ』にくらべると、毛羽立たないいい用紙が使はれてゐます。
今日の寫眞:我が家唯一の良寬の書。もちろん布に印刷されたお土産品です。何て書いてあるかといふとですね、くづし字ですよ。しかも、くづし字中難讀中の難讀の良寬さんの書です。ヒントは、五合庵のそばにこの句碑が建つてゐます。「たくほどにかぜがもてくるおちばかな」です。毎日目にしてゐるので讀めるやうになりましたが、今まで見たどのくづし字よりも難解です。
それと、友人の書家がぼくのために書いてくれた、良寬の歌です。この方は讀めますね。ぼくの、いつもの心境です。
はじめの文庫本二册は、ぼくの愛讀書、良寬の詩集と歌集です。