十一月十九日(水)甲午(舊閏九月二十七日) 快晴

 

今日も朝からいい天氣。妻と淺草に行きました。一緒にお晝を食べるのが目的でしたが、ぼくには密かなる計畫があつたのです。「浅草エキミセ古本市」が、東武鐵道淺草驛の驛ビル「エキミセ」(前は松屋だつたと思ふのですが)の屋上で今日から開かれるのです。ちよいとでも顔を出したいなとの計畫です。

氣がかりなので、はじめに訪ねてしまひました。ところが、先日の新橋驛前にくらべたら三分の一もないほどの規模で、妻を長く待たせるまもなく屋上をあとにすることができました。外人がばかに目立つ雷門通りを歩いて、尾張屋さんを目指しました。ちようどお晝時でしたが、案外にすいてゐて、また、荷風さんの大きな寫眞を前にした席でいただくことができました。

妻はあんかけうどん(具がたくさんなので、他の店だつたら、とろみをとれば、おかめうどんで通る品です?)で、ぼくは、天丼をいただきました。大きなエビが二本、丼からはみ出してのつてゐました。滿腹したあとは、腹ごなしに賑はふ街をぶらつきました。二人で淺草を歩くのは久しぶりです。ラムちやんが逝つてしまつたおかげです。だから、歩きながら話題にのせてあげました。

永井荷風さんがかよつたアンヂエラスの前をゆくと、手ぬぐい屋さんがあつて、妻に二本氣にいつたのを買つてもらひました。ちやうど腰にぶるさげてゐた手ぬぐいと同じ模樣のが店頭にあつて、店員に敎へたら、かはいい顔で「あッ、ありがたうございます」、とニコリとしてくれました。

上野に用事があるといふ妻につきあひ、松坂屋の中二階でクリームあんみつを食べてから別れました。ぼくは、ついでですから、大江戸線で本郷三丁目驛に行き、そこから本郷通りの古本屋をはしごしたんですが、どうしたことでせう、本郷弥生交差點までの間に、入つた店がたつた五店舗だけでした。もつとたくさんの古本屋さんがあつたはづなんですがね。“かねやす”のそばの大學堂も含めてですよ。

やはり、本郷弥生交差點に近い、第一書房さんが期待にはづれず、いいものが揃つてゐました。掘り出したのは、『うまはくブックレット 馬と石造馬頭観音』、『季刊日本思想史 特集―思想史としての「吾妻鏡」』、それに、『セミナー[原典を読む]⑦一休ばなし とんち小僧の来歴』の三册です。しかも、そのすべてが、店のそとの地面に平積みされてゐた中から見つけたものです。

だめです。だいぶ買ひすぎてゐます。出費がかさむといふより、ぼく自身の興味がますます廣がりすぎてきてしまつてゐるのです。古本屋さんといふのは、樣々な可能性を秘めてゐて、誘惑するのですよね。中仙道關連はもちろん、百人一首、藤原定家、それに、徐々に取りかかつてゐるのが一休さんと、白隱さん、さう、忘れてはならないのが、上田秋成さんです。それらのすべてに關はるのがくづし字と古文書と漢文ですからね。まだまだへたばつてはゐられません。外にでるのを控へるしかなささうです。

 

今日の寫眞・・東武電車が、驛ビルに入るところ。驛ビル屋上の古本市。アンヂエラス。それと、東大赤門前にあつた、樋口一葉ゆかりの地碑。

 



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