九月廿六日(金)庚子(舊九月三日) 晴れ

 

母が、昨日、ゲートボールの大會に出かけて那須に行つてゐるので、今日は、妻と二人で美術館に行きました。妻が、《靑磁のいま》展を見たいと言つてゐたんです。神田驛からはタクシーで向かひました。暑いし、先日來歩きつづけてゐるので、大事をとつたんです。

舊近衛師團司令部廳舎である、東京國立近代美術館工藝館は煉瓦造りの、それでゐて明るい外觀の大きな建物です。わけありのぼくですから、二人で無料で入館しました。「南宋から現代まで」と銘打つてゐました。その南宋から明時代までの作品が二十六點、もちろん中國渡來のものです。それと、日本の明治時代からの作品が九十八點。

はじめに、渡來の作品を一點一點ゆつくり見ました。ぼくは、その中の一つ、「靑磁輪花椀 銘“鎹(かすがひ)”」といふのに目がとまりました。「織田有樂齋」、「角倉家」、「平瀨露香」などの著名な茶人の手を經たとの傳來があるといふ作品です。細川幽齋も手に取つたかも知れませんね? なんで銘が「鎹」かといふと、割れたので、製作した南宋の龍泉窯に送つたところ、鎹で修復されて歸つてきたんださうです。それでまたさらに價値が高くなつたといふ作品なんですね。素晴らしい。しばらく目がはなせませんでした。

それにくらべて、と言つては失禮ですが、我が國の作品はどれもこれも自己主張がつよすぎて、見てゐて落ち着かないです。作品だけが浮き上がつて見えるのです。技巧をこれ見よがしに押し付けてゐる感じです。それはそれでいいんでせうけれど、いいものを見てしまふとその差が歴然としてしまひます。

「靑磁輪花椀 銘“鎹”」の繪はがきでもと思つて聞いたらないんです。しかたなく、メモ用紙の表紙に寫眞があつたのでそれを求めて歸路につきました。いや、ぼくたちは、タダで入つたので、それでやすく見えてしまつたのかも知れません。入館料を自腹で出してゐたら、みなもつとよく見えたかもしれませんね? 

 

つづいて、東京國立近代美術館で開催中の、「菱田春草展」を見ました。これもさつと歩いて見ただけでした。いいな、と思はせる作品にはお目にかかれませんでした。でも、多作家なんですね、春草さん、溢れかへるやうな量です。入館料を拂へばもつとよく見えたかも知れませんが、すみませんでした。

 二人で、そこから神保町まで行き、食事をしてからは、別行動としました。今日は、上田秋成の本を探しました。するとないものですね。そこで、日本書房にいつて、どうにか、「國文学 特集 上田秋成」、「文学 特集=上田秋成 没後二〇〇年」、それに、「別冊現代詩手帖巻之三 上田秋成 怪異雄勁の文学」を手に入れました。これらには、必ず參考文獻が載つてゐるので、またまた守備範圍が廣がつてしまひさうです。はい。 

 

今日の寫眞:①諏訪湖を見下ろす鳥居平やまびこ公園で見つけた紅葉したもみじの葉。②《靑磁のいま》展看板。③靑磁輪花椀 銘“鎹”。④東京國立近代美術館工藝館の外觀。⑤東京國立近代美術館前にて。

 



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