五月(皐月)一日(木)壬申(旧四月三日) 晴れ、暑くなる

夕べはたいへんなことがありました。何がたいへんだつたかは、少し落ち着いてから報告したいと思ひますが、そのおかげで、今日は寝不足・・・。

ラムの散歩と家事のお手伝ひのあひだをぬつて、やはりうとうと。それでも本は手放しませんでした。

小沢昭一オトウサンの『東海道ちんたら旅』のまだ途中なんです。ところが、「これは面白過ぎて、肩の力も頭の力もぬけ過ぎて、参考にはならんと思ひました。」なんて書いてしまひましたが、どうしてどうして、エロでスケベエの「小沢昭一的こころ」のあちこちに、光るお言葉が散在、お勉強になること、下手な歴史書は及びもつきませんです。

「ヘソ曲がりの私としては、有名なところ、賑やかなところは、原則的に降りないつもりでありまして」と言ふやうに、オトウサンの感性に響いた、といふことは、読む者の感性にも響いてくるやうな場所の案内には、思はず背筋を伸ばしてしまひました。

例へば、二宮駅の「いたいけな少女のブロンズ像」のはなし。沼津駅の「江原素六先生」のはなし。島田駅、金谷駅、菊川駅、掛川駅あたりは、近くに五年も住んでゐたのに気がつかなかつたはなしばかり。磐田駅では、「トンボの宝庫」と知られた桶ケ谷沼のはなし。浜松駅では、近くの、テキ屋さん・露天商の守り神「神農様」の碑が建つ鴨江観音のはなし。これは知つてお得の、鷲津駅の「常霊山本興寺(一名『文晁寺』)」のはなしと「豊田佐吉記念館」の紹介。さらに、豊橋駅からは、例の『笈の小文』で訪ねた、渥美半島の城下町田原と渡辺崋山のはなし。はたまた、三河万歳の名門とされてゐたが絶滅してしまつた「小坂井の万歳」の土地を巡るはなしなどなど、いや、実に勉強になります。

さうでせう、御存じでしたでせうか、エロでスケベエの「小沢昭一的こころ」のオトウサンですが、その著作には、『日本の放浪芸』、『私は河原乞食・考』、『私のための芸能野史』はたまた『芸能と社会』なんて放送大学教材まで書いてゐるオトウサンですからね、その薀蓄があちこちに散りばめられてゐて、その気になつて読めば、〈東海道の歴史と芸能を巡る旅〉と申しても決して言ひ過ぎではないんであります。はい。

 

あ、今、庭でシジュウガラが鳴きました! きれいな鳴き声です。

伊豆の山の家では、鳴き声の美しいシジュウガラにきてもらいたくて、庭先に餌場をつくり、ひまわりの種をご馳走してたんですが、やつてくるのはガラガラ声のヤマガラばかり。それでも、ヤマガラは人懐つこいので餌は欠かしませんでした。そのおかげで、あるとき見たら、庭やミカン畑のあちこちにひまわりの花が咲いてゐるではありませんか。

 

今日の写真:東部地域病院救急室。真夜中に萌える花。そして、散歩風景とジャスミンの花。また、伊豆の山の家のヤマガラと咲いたひまわり。