三月廿二日(土)壬辰(旧三月廿二日) 晴れ

今日は気晴らしに、いや、今日もといふべきかも知れませんが、いつものやうに神田古書会館まで出かけてきました。今週は“趣味展”の即売会でした。

千代田線綾瀬駅から乗車して、御茶ノ水駅下車、徒歩で古書会館を訪ねました。そのあとは、神保町交差点まで古書店街をぶらぶら歩き、そこから白山通りを水道橋駅へ向かひ、そして御茶ノ水駅でまた千代田線に乗り換へて帰路に着くといふ、一周コースでした。歩数は、五五〇〇歩でした。まあ、軽い散歩といふ程度でせうか。

ぼくの読書は、読みたいものを読むわけですけれど、方向性としては、歴史紀行であり、中仙道であり、且つまたくづし字・古文書であつたり、はたまたアドレナリン発散ミステリーだつたりと、多岐にわたつてゐるんですが、そのやうな方向性のなかのものを、ではその都度手に入れて読むのかといふとちよつと違ふんです。まあ、ぜいたくな読み方かも知れませんが、古書店巡りの段階では、その方向性に照らして目についたものをまづ手にしてしまふのです。

だから、例へば、『中山道紀行十二』を書いてゐるときに、『勝利の農民戦線』や『碓氷路 東山道と防人』などを即座に引用できるわけで、そのやうな準備といふか、日ごろの努力なしには、京都三條大橋までは書き続けられないでせうね。碓氷峠を越えると信州です。それなのに、準備が進んでゐないんです。ちよつと焦つてゐます。古本屋通ひは、ですから今のぼくにとつては無くてはならないお仕事みたいなものなんです。決して贅沢をしてゐるわけではないんです。おゆるしくださいませ。

 

ところで、残念ですが、今月の“トラベル日本”開催の「中仙道を歩く」は、お休みすることにしました。おそらく四月も休むことになるかも知れません。こんなことはじめてですが、もちろんその穴埋めの計画は立ててゐます。それで、このひと月間、入院・手術前後の日々を、「くづし字・古文書解読強化月間」としたいと思つてゐます。昨年八月は、「群馬の古文書」を勉強しましたが、今度は、芭蕉の紀行文を読むことにしました。

『野ざらし紀行』『鹿島詣』『笈の小文』そして『奥の細道』です。『更科紀行』については、影印本が手に入れば読むことにします。それと、『曾良旅日記』もあるんですが、実は、これが一番長編で、芭蕉をすべて合はせたその二倍はあるんです。まあ、読めるところまでにしたいと思つてゐます。

でも、芭蕉の自筆本ですからね。よく味はつて読みたいと思ひます。しかしまた、短編だからと言つてあなどつてはなりません。文字面(もじづら)だけ追ふのは簡単ですけれど、その含蓄するところを分け入つて理解しようとすると、これはたいへん時間がかかります。現に、『野ざらし紀行』は、コピーしたものを、ベッドのかたはらにぶる下げて読んできてゐたんですが、冒頭の「三更月下無何入(さんかうげつかむかにいる)」のところで、すぐ眠くなつて、何度繰り返し読んだことでせう。腑に落ちるといふのは、ある意味で悟ることですから、読む側の心のありかたが問はれることでもあるんです。いやはや。

 

今日の写真:今日の掘り出し物、『仲仙道恋路のくどき』(たつた六折の和本)。お馴染み、日本書房。『天理図書館 善本叢書 芭蕉紀行文集』。そして、お薦めの食事処、二軒。