三月十四日(金)甲申(旧三月十四日) 晴れのち曇り 

夕べは早く寝たのに、それがたたつたか、夜中に目が覚めて、それからは目が冴えるばかりでした。そこで、先日ワゴンセールで買つた、小沢昭一の『川柳うきよ鏡』を出して読みはじめてしまひました。いやあ、それが面白くて、目どころか頭も冴えるばかり。

それで、どういふ連想か、ふと思ひ出して、書庫から、殿山泰司センセイの本をごそつと持つてきまして、まだ読んでゐなかつた、『殿山泰司のしゃべくり105日』を読みだしたら、これまたタイちやんの世界に引きずり込まれてしまひました。それでも自制して、まづは、小沢昭一お父さんの『川柳うきよ鏡』を一気に眺め読みしましたです。はい。

どうも、ぼくは、この二人のオヂサンたちに、知らないあひだに、多大なる影響を受けてきたのかも知れません。長年にわたつて繰り返し読み続けてきましたからね。この「ひげ日記」をそのやうな目で読み返すと、如何にお二人の精神が、ぼくの血となり肉となつてゐるかがわかるといふものです。

例へば、「このへんで、オレがこの暮れにどんな仕事をしたのか報告せねばならんなァ。ミナサマとは関係のないことだけど、そんなことオレの知ったことではないのだから、やっぱり報告せねばならんなァ。オレのことを報告魔というヤツもいる。」なんて書いてゐるんです。

ぼくも〈報告魔〉でせうか。いや、たぶん、これが「日記」の文体といふか、書き方として、「日記」以上にあれこれ書けるからなんでせうね。タイちやんも、もし自分のために書く日記にしてゐたら、こんなにも面白くはなかつたでせう。思はず、自分の日記の書き方に自信を持つてしまひました。

また、なんといつても、タイちやんの日記(報告)は、ジャズとミステリーの宝庫なんです。『JAMJAM日記』を見れば一目瞭然です。撮影の合間を縫つて読んだ本のこと、或は、一人宿のフトンの中で朝まで読んだ本の報告やら、郵便貯金ホールに「ビル・エヴァンス・トリオ」のコンサートに行つたり、渋谷公会堂で、「チャールス・ミンガス・クインテット」を聴きに行つたりの、なんとも羨ましくなるやうな生活(?)を垣間見せてくれるんです。

さういへば、刺激されて、コルトレーンや山下洋輔トリオを聞いたり、お薦めのミステリー小説を書き出して探し歩いたこともありましたつけ。タイちやん主演の『裸の島』(全編一切のセリフ無し!)や『わが町』を観たことがある人なら、タイちやんのハチャメチャ人生をこよなくいとしく思ふはづだとぼくは思ふのです。『わが町』では、小沢昭一お父さんも共演してゐましたね。

この系列でいふと、ぼくの好きなのは、『言わなければよかったのに日記』の深沢七郎さん、『ポロポロ』や『ぼくのシネマ・グラフィティ』の田中小実昌さん、『唄えば天国ジャズソング 命から二番目に大事な歌』の色川武大さん、それに『路上観察学入門』の赤瀬川原平さんと、ついでに、『路上探偵事務所』の林丈二さんもあげておきませうか。でも、何が共通してるでせうかね。

 

さう、今日は、ぼくの清水時代から、我が子のやうに付き合つてきたマリちやんの一人娘のさとちやんが、清水東高校に合格したとの連絡がありました。よかつたよかつた!

ところで、また、ラフォーレ修善寺から、突然仕事が舞ひ込んできました! しかも、明後日なんです。いつも早めに知らせてほしいと伝へてあるのにどうしたことでせう? もちろん了解しましたよ。これが、ぼくの唯一の〈社会〉との接点ですからね。

 

今日の写真:今日のラム。『川柳うきよ鏡』と、タイちやんの本とDVD。おまけに、さとちやん特集。ラムと、紅茶づくり、ぼくと薪割り。