正月十日(金)辛巳(旧十二月十日) 晴れ、北風強く寒い 

朝食のときです、今日は寒さうだけど、いい天気だな、となんのきなしに口にしたところ、ぢやあ、出かけたら、との妻のお言葉です。思ひもかけぬとはこのことでせうか。ぼくは、すかさず、うん、ぢやあ行つてくるかな、とためしに言つたところ、二時から車の点検があるから、早く行つて早く帰つてきたら、ともうぼくの心は瞬時に古書会館に飛んでしまひました。

いや、心を読まれてゐたのかもしれません。とにかくいただいた貴重な外出です。取る物も取り敢えず綾瀬駅まで送つていただきました。新御茶ノ水駅下車、徒歩五分といつたところでせうか。今日と明日は、「愛書会」の古本市です。地下の売り場は十時半といふのに、すでに大勢の人々。なにやら、これからカメラが入りまーす、なんていふ掛け声があつたかと思ふと、どこかのテレビ局なんでせう、大きな撮影機が持ち込まれてきました。ぼくは、こそこそと、避けるやうにして、並んだ書物に没頭しました。

 今回の掘り出し物は、なんといつても、『伊能忠敬測量日記』でせう。ぺらぺらと立ち読みしただけで、気分は旅の空です。でも、一番高価でした。次は、『治安維持法獄中史料』です。裁判のやりとりが問答形式でそのまま記されてゐるのです。この法で、何が問はれたのか、そして、今後、例の「秘密保護法」でなにが問はれることになるのか、大いに参考になると思ひました。さらに、『犯科帳(自・寛文六年、至・寛保二年)』といふ、これは江戸時代の裁判史料のやうです。そのほか、『中世の関所』、『江戸編年事典』、そして和本の『白隠和尚辻談義』。天明八年申十月刊行の本です。これは虫喰ひがあるのですが、読むには差し障りがなささうなので購入。帰り電車の中で少し読めました(漢字には、変体仮名ですが、ふりがなが振つてあるのです)!

帰りは、町屋駅で下車し、京成に乗り換へです。実は、ここに、今川焼の店があるんです。博多屋といふんですが、あんこがたくさん入つてゐて、たまあに食べたくなるんですよね。

 帰宅したら、妻はすでに出かけたあとでした。そこで、ラムと散歩に行き、帰つてからは美味しい食事を与へました。

 

今日の写真:古本市。例の鴨南蛮。『白隠和尚辻談義』。博多屋の今川焼。そしてけふのラム。