十二月三十一日(火)辛未(旧十一月二十九日) 晴れ 

 今日は何をしようか、と目覚めてはじめに思ひました。汚名挽回のためにも、この際何を・・。しかし、考へた結果、ぼくが家にゐないことが最善の策なんだ、と判断いたしました。

 朝食後、それでもなかなか言ひ出せないでゐましたが、思ひ切つて口にしますと、「どうぞどうぞ、いつてらしゃいませ」との、実に優しいお言葉です。もちろん、理由はこしらへてあります。BSで連続放映中の、〈浅田次郎と歩く小説『一路』の世界〉を一緒に見てましたので、「中仙道を歩く」旅にも参考になるからと、その本を手に入れてくるといふたいへん大がかりな理由です。

 ただ、図書館に行つても、予約が入つてゐるだらうし、新本を買ふのも悔しいので、ブツクオフに行つてくるよと家を飛び出したのであります。はじめは、綾瀬駅前店。ありませんでした。次に、亀有店。ここにもありませんでした。それではと、江戸川を越えた松戸店を訪ねました。しかし、そこにもありません。それどころか、『直筆で読む「坊ちゃん」』なんてのがあつたので、つい手を出してしまひました。もうやけのやんぱち、柏駅のいきつけの古書店に向かひました。

 いへね、それには深いわけがあつて、さう、実は柏駅前には、「天外天」といふ中華ソバ屋があるんです。そこの担々麺がこれまた絶品! ぼくは、体にあまりよくないと思ふので、たまにしか食べませんが、他のどのお店よりおいしいこと請けあひます。そんなことで、食欲半分、古本屋さん半分の気持ちで柏に決めました。

 そもそも、この店を知つたのは、古本屋さんが十二時から開店だつたので、その待ち時間に入つたからでした。ランチメニュー(定食)には、酢豚に麻婆豆腐、チンジャオロースーにニラレバ等の定食もあるんです。でも、一人だと、あれもこれも取れないのが残念です。

 さて、その太平書林さんですが、ここには掘り出し物があるんです。けふだつて、肝心の『一路』はないにしても、宮本常一さんの『澁澤敬三』、『柏木義円伝』、『上毛野国と大和政権』、矢内原忠雄編『現代日本小史』などを発見。この機を逃がしたら二度と入手困難な本ばかりです。それに、この際だからと、学生時代に読んだことのある、藤村の『夜明け前』も買ひ入れてしまひました。

 このやうに、ぼくは、古本屋さん専門ですから、新刊本屋さんにはほとんど行つたことがないんです。でも、今日、掟破りですが、元旦からどうしても読みたかつたので、柏駅ビルの本屋さんを訪ねたのです。ところが、そこにもありません。売り切れなんださうです。もう、ええ~、ですね。最後の手段。柏駅から常磐線で一気に北千住駅にもどりました。案の定、ブツクオフにはありません。それで、マルイの中にある紀伊國屋書店を訪ねたのです。藁をもつかむ気持ちです。そして、調べてもらつた結果、やつと手に入つたのです。それでもやはり悔しいです。だつて、けふ買つた古本全部より高いんですものね!

 たしかに、こんなに苦労して手に入れた本も珍しいですね。掟まで破つて。もう、絶対役立たせてやるのだと、堅く決心をした次第であります。でも、一年の締めくくりとしてよかつたんだらうかと、ちよつと反省してもゐます。

 夕食は、年越しそばです。母と妻とテレビにもおつきあひしてあげました。母は、〈紅白歌合戦〉より〈年忘れ!にっぽんの歌〉のはうがいいといふし、ぼくは、その隙をねらつて、〈浅田次郎と歩く小説『一路』の世界〉の終はりのところを、ちよびつと見ることができました。

 あ、大瀧詠一さんが亡くなられたとの知らせ。ぼくより若いはづですよ!

 今日の写真:朝の散歩、北向き地蔵とラム。寝ぼける野良猫。ブツクオフその他。